サムライブルーの原材料BACK NUMBER
鎌田大地、ブンデス1年目を終えて。
「帰りたい気持ちは一切ない」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byAFLO
posted2018/07/23 10:30
20歳でフランクフルトに移籍し、ドイツカップの優勝も経験した。鎌田大地が日本代表世代交代の先頭に近い位置にいることは間違いない。
今やれること=筋トレ。
鎌田はこう振り返る。
「僕の感覚としては、開幕戦に出させてもらいましたけど、まだチームについていけてるような感覚があんまりなくて、自信を持ってやれているとは言い切れなかった。(シーズン)前半戦の最後のほうから向こうのスピードにも慣れて、練習試合でも常に点を獲っていたんで出場時間も増えてくるかな、と。でも自分の感触とは真逆で、メンバーにも入れなくなった。“なんで?”とは思いましたよ。でも、やれることをやっておこう、と」
最後の出場となったレバークーゼン戦ではクロアチア代表FWレビッチにスルーパスを送って好機を演出したものの、ニコ・コバチ監督の評価は上がらなかった。ならば、今足りないものに取り掛かろうとした。
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やれること、とは、すなわち、体を強くすること。
180cmと身長はあっても、体重は70kg台前半。華奢な体は当たり負けし、筋力トレーニングのテストでも数値は「下から2、3番目のレベル」だった。スプリントにしても、周りと比べて下回っていることも分かっていた。
「ハセさんに迷惑は掛けられない」
上半身の筋トレは、徹底してやってきたつもりだ。
たとえば50kgのおもりを10回3セットやっていたメニューは、70kgになった。当たり負けない体を入念につくっていった。
「下半身は練習で勝手に鍛えられているし、その部分の筋トレをやってしまうと練習で出せなくなるため」メンバー外が決まったら、下半身のトレーニングをこなすようにした。体重も増え、華奢な体は随分とたくましくなった。
しかしそうはいっても、まだ21歳の若者。監督に評価されない日々に、精神的なストレスが蓄積していったのもまた確かだった。
「うまく眠れない日」も少なくなかった。「サッカーが充実していないと、プライベートも充実しない」と感じたこともあった。
大先輩の長谷部誠に、相談すればいいじゃない?
人はそう思うかもしれないが、「プライベートでは仲良くさせてもらっていても、逆にハセさんに迷惑は掛けられない」。敬愛しているからこそ、甘えたくはなかった。