スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
ワールドカップと最短退場者。
C・サンチェスは史上2番目だった。
posted2018/06/21 17:00
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
Asami Enomoto
カルロス・サンチェスが右手を出した瞬間、私は短く叫んでいた。たぶん、数百万を超える人々が一斉に叫んだにちがいない。ロシア・ワールドカップのグループリーグ、日本対コロンビア戦の開始直後だった。
C・サンチェスは、コロンビア代表のMFだ。日本のMF香川真司のシュートに対して、彼は反射的に腕を伸ばした。手を出さなければ、ボールは確実にネットを揺らしていた。試合開始後、わずか3分の出来事だ。
スロヴェニア人レフェリーのダミール・スコミナは、迷わずレッドカードを出した。早い。もしかすると史上最短か。一瞬、そんな考えが脳裡をよぎったが、すぐに思い直した。たしか、1986年のメキシコ大会で、もっと早くレッドカードが出された試合があったはずだ。
わずか52秒での退場劇はウルグアイのDF。
調べてみると、たしかにあった。
グループEで戦っていたウルグアイ対スコットランドの試合で、ウルグアイのDFホゼ・バティスタが、なんと開始後52秒で退場処分を受けていたのだ。
しかも、バティスタがファウルを犯したのはそれより13秒前の開始後39秒だった。彼は、スコットランドのMFゴードン・ストラカンを倒した。フランス人レフェリーのジョエル・キニウは、しばらくためらったあとでレッドカードを出した。13秒間の空白があったのはそのためだ。
11人対10人の試合になったが、結果は0対0の引き分けだった。スコットランドはここで敗退し、ウルグアイはラウンド・オブ16(決勝トーナメント1回戦)に進んだものの、アルゼンチンに0対1で敗れた。