球道雑記BACK NUMBER
甲子園でスター扱いドラ1の3年目。
ロッテ平沢大河は毎日が必死!
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byKyodo News
posted2018/06/20 07:00
6月に発表された「マリーンズイケメン5」では2位に800票近い差をつけて優勝した。
「大変ですけど……大変じゃない」
仙台育英高からプロ入りして今年で3年目になる。
その若さには似合わない悲壮感すら漂わせる彼は、内野と外野のグラブを持ち替え、時にはファーストミットもはめて、試合に出られる可能性を探し続ける。ガムシャラとはまさにこのことだ。
「外野もするようになったから、やることが増えて大変だね」
ベンチに戻って来た彼に声をかけた。すると、大粒の汗を拭いながらこう返す。
「大変ですけど……。いいえ、大変じゃないです」
弱くなりそうな自分の気持ちを打ち消しているようにも見えた。
「全てのことに謙虚でいる」姿勢。
ドラフト1位で入団し、周囲からの期待、それと同じ分の重圧もある。本来なら弱音のひとつもどこかで吐きたいはずだろう。それでもめげない。視線を前へ向ける。野球に対するひたむき、かつ貪欲に向かう姿勢は入団1年目の頃と全く変わらない。
「全てのことに謙虚でいる」
そう誓った彼の姿勢は、入団会見を迎えたあの日のままだし、グラウンドを走って移動する姿を見ているとまるで高校球児のようにも見える。
「走って移動? それはどこでも一緒ですよ。当たり前です。時間は……そうですね。正直もっと欲しいです」
ほんの少し笑みを浮かべ、また次の練習へ走っていく。その姿はいつどこで見ても変わらなかった。
自分の20歳の頃はどうだったろう? 平沢の姿を見ているとふとそんなことを思うことがある。“フレッシュマン”なんて呼ばれて初々しさを醸し出していた姿はおそらく数カ月で変わっていたように思う。何かを注意されると先輩に腹を立て、失敗をすれば他人のせいにする、自分の親以上の年齢の上司に楯突いたときもあった。
「ああ、バカだったな。子供だったな」と、45歳になった今になって思う。
その点、平沢は違う。甲子園を沸かせて、ドラフト1位でプロに入団。その経緯ではスター扱いもされたが、プロの世界に慣れてきた今も、良い意味で入団当初のままである。