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国内唯一の国際ラリー「ラリー北海道」。
雨を味方に奴田原文雄が今季初優勝。

posted2015/09/24 17:30

 
国内唯一の国際ラリー「ラリー北海道」。雨を味方に奴田原文雄が今季初優勝。<Number Web> photograph by TOYOTA

昨季クラスチャンピオンである奴田原文雄&佐藤忠宜組が今季初勝利を飾った。

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 FIAアジア・パシフィックラリー選手権(APRC)と併催されるJAF全日本ラリー選手権第7戦「ラリー北海道」は、国内最大の規模を誇るラリーだ。

 かつて世界ラリー選手権(WRC)「ラリージャパン」が行なわれた北海道帯広市を中心に、WRCで使われたステージを多く使用する国際水準の本格的ラリーとして知られている。現在日本で開催される唯一の国際ラリーとして、スペシャルステージ(SS)の走行距離が長いだけではなく、平均スピードが100km/hを超える高速SSが多いため、ドライバーのテクニック、マシンの耐久性など、他のラリーとは比べものにならないほどハイレベルなものを要求する過酷なラリーである。

 さらに、シリーズタイトルを争う上で「ラリー北海道」は大きな意味を持つ。

 グラベル(未舗装路)ラリーで走行距離が長いことから、ポイント係数は2.0、つまり入賞者に与えられるシリーズポイントが2倍となる。そのため各クラスのチャンピオン争いに及ぼす影響が大きく、シリーズ天王山として注目されているのだ。

 9月18日に開幕した「ラリー北海道」、過酷なラリーにさらに試練が襲いかかった。

 18日夕方から雨が降り始め、全日本の初日となる19日にはさらに激しい雨が降り続き路面コンディションが悪化。そのため、19日だけで出走33台中19台がコースアウトやマシントラブルで戦線離脱するという、異例の壮絶なサバイバル戦となったのである。

奴田原が序盤で一気にリード、そのまま逃げ切る!

 最上位クラスのJN6は、シリーズランキングトップの新井敏弘/田中直哉組(スバルWRX STI)と、ランキング2位の勝田範彦/石田裕一組(スバルWRX STI)のタイトル争いが焦点だった。

 ラリー開始とともに飛び出したのは、これまでトップクラスでは9度のシリーズチャンピオンを奪いながらも、今季はこの第7戦まで未勝利の奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューションX)。クラスのなかで唯一、スタート時点からウエットタイヤを装着した奴田原は、SS3ヤムワッカ1(23.49km)とのクンネイワ1(28.75km)の2SSだけで2位以下に1分以上のタイム差をつける。

 ウエットタイヤは雨に強いものの、タイヤのサイドウォールが柔らかいためにドライタイヤに比べてバーストしやすく、タイヤの寿命も短めだ。そのため、奴田原以外のドライバーはドライタイヤを装着してスタートしたが、ウエットタイヤ装着を決断した奴田原の選択は、このラリーで最も効果的な戦略となり、序盤から大きなリードを築くことに成功した。

【次ページ】 2位の新井敏弘がチャンピオンを獲得。

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