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トヨタ・ハイブリッド車がル・マン制覇。
「レースで使えるの?」からの12年間。
text by
大串信Makoto Ogushi
photograph byTOYOTA
posted2018/06/19 17:00
24時間を圧倒的な速さで駆け抜けたアロンソ(車上左)、ブエミ(同右)と中嶋(車内)。
トヨタのハイブリッド技術、苦難の12年間。
今年のトヨタには他車よりも45kg重い車両最低重量をはじめ、燃料搭載量や燃料流量も絞られるなど、何重ものハンディが課せられていた。
2006年、トヨタは初めてのハイブリッドレーシングカーを開発し日本国内レースに試験的に投入した。このときにはル・マン出場どころか、果たしてハイブリッドカーの技術が競技に通用するかどうかすら見当がつかず、走らせるのが精一杯の状況だった。
それから12年、トヨタのハイブリッドレーシングカーは、ル・マンで他車とのバランスをとるために途方もないハンディを背負わなければならないほどのパフォーマンスを発揮するに至った。
今年のトヨタは、まずこのハンディと闘わなければならなかった。
そのうえで、これまでトヨタが苦しんできた「24時間レースの怖さ」との闘いが始まった。
「ル・マンの怖さ」は目に見えない。
1994年は首位を走りながらフィニッシュまであと38分でトラブルが発生し優勝を逃した。
1998年は1-2体制でレースを支配しながらトラブルが相次ぎ優勝争いから脱落した。
1999年はレース後半、2位から首位を追撃し、残り30分で逆転優勝かと思われたとき、タイヤがバーストして逆転はならなかった。
2016年には首位を走りながら残り3分でマシントラブルでレースを終え、必勝態勢で臨んだ昨年2017年は、圧倒的な速さを見せて序盤7時間を1-2体制でリードしながらトラブルで失速した。
壊れないはずのモノが壊れる。ミスしないはずの人間がミスをする。それがル・マン24時間レースである。
「ル・マンの怖さ」は目に見えない。目に見えるライバルがいなくともル・マンには、これまで幾多の強豪を打ちのめしてきた見えない敵が住み着いているのだ。