松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹「もっと吹いてほしい」
上位総崩れの中で耐えた全米初日。
posted2018/06/15 11:55
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Sonoko Funakoshi
雨に降られた前日とは打って変わって、青空に恵まれた初日のシネコックヒルズ。しかし、明るい陽光とは裏腹に、目まぐるしく風向きを変える海風はコースのあちらこちらで吹き荒れていた。
午前8時13分。10番からスタートする松山英樹がティグラウンドにやってきた。白っぽいシャツと真っ赤なパンツ姿の松山は、ちょうどシネコックヒルズの今日の天候のように一見、明るく見えた。いや、スタープレーヤーとして一生懸命に笑顔を見せていたのかもしれないが、そのとき彼の胸の中には不安という名の風が吹いていた。
開幕前の火曜日に日本メディアからショットの感触が向上したかと問われた松山は「わからない」と答えたが、その口調からは「悪くない」というニュアンスが感じられ、実際、練習段階で見た松山のドライバーショットは、歯切れのいい音で球を打ち出し、フェアウェイへと運んでいた。
ドライバーのヘッドが、割れた。
練習日に松山が手にしていたのはキャロウェイ「グレートビッグバーサ」。今年4月のマスターズも、このドライバーで戦った。
だが、一時帰国と休養を経て戦線復帰した5月の3連戦と先々週のメモリアル・トーナメントでは、テーラーメイドの「M3 440」に持ち替えていた。
そして今週、使い慣れたキャロウェイを再び握って練習と調整を重ねていた。フェアウェイをしっかり捉え、次打のアイアンショットでチャンスを作る自分流のスタイルの武器として、これなら悪くないという段階まで持っていっていた。その矢先、アクシデントに見舞われた。
開幕前日の水曜日。雨の中で9ホールの練習ラウンドを終え、さらに練習場で球を打っていたときのこと。打感や打球音、球の飛び出し方の僅かな違いを五感をフル活用して感じ取っている松山が異変に気付いた。
翌日からの4日間の武器にしようと決めていたキャロウェイのドライバーのヘッドが割れていた――。