実戦初使用のドライバーで全米初日へ。

　初日の早朝。スタート前の練習場でいくつかのドライバーを試した上で、松山が選んだのはピン「G400LSテック」。

「何かのときに打ったことあるドライバーだったので……」

　使い慣れたドライバーが割れてしまったショックもさることながら、実戦初使用のドライバーをいきなり全米オープン初日に使わざるを得ない状況に、不安を覚えないはずはない。

　しかし、目の前にある選択肢の中から、今ベストと思えるものを選ぶ以外に道はない。いざ、出陣――。

　10番ティに立った松山の胸の中には、そんな不安と勇気が入り混じる複雑な風が行ったり来たりしていたのだと思う。

「12番でフェアウェイに行ったんで」

　出だしの10番はグリーン左奥にこぼれたが、絶妙なアップ＆ダウンでパーを拾った。続く11番（パー3）はグリーン右手前のバンカーからの第2打をピンに寄せ切れず、ボギー。やや苦しい出足だった。

　だが、実戦初使用のピンのドライバーを初めて握った12番は、フェアウェイからピン3メートルに付け、バーディーを奪った。

「12番でフェアウェイに行ったんで、もう大丈夫だなと思ってやっていた」

　胸の中の不安の風をここで断ち切った松山。そこから流れを好転させたかった。

　しかし、続く13番で第2打をバンカーに入れ、再びボギー。15番はユーティリティで打ったティショットが左ラフにつかまり、3つ目のボギー。

　16番はピンのドライバーでフェアウェイを捉えたが、2打目を右ラフへ、3打目をバンカーへ入れ、次打でピン80センチほどへ寄せながら、3パットしてダブルボギー。前半で4つスコアを落とした。

【次ページ】　悔しいというより、納得がいかない表情。