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ナダル、世代交代を阻み全仏V11。
聖地への愛と絆とフランス語。
posted2018/06/13 08:00
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Getty Images
自己の記録を更新する11回目の優勝。クレーコートの聖地ローランギャロスで今年もトロフィーを抱いた32歳のクレーコート・キングの目には、なお涙があった。
「自分がここまでやれるとは、正直思えていなかった。ケガで辛いときもあったし、クレーシーズンだって不安を抱えて始まった。去年の上海マスターズ以降、5カ月間くらいはフルに戦うことができなかったから、感情的になるのは自然のことだった」
ラファエル・ナダルにとって昨年は復活の年だったが、決して順風満帆ではなかった。全仏、全米で頂点に立ったが、シーズン終盤は右膝の痛みでツアーファイナルズの途中欠場などがあり、今年全力を注いだ全豪オープンもマリン・チリッチとの準々決勝を臀部のケガで途中棄権。ケガの多い印象のナダルだが、グランドスラムでの途中棄権は2010年の全豪オープン以来でキャリア2度目のことだった。3月のインディアンウェルズとマイアミの両マスターズは欠場した。
クレーの新プリンス、ティームとの激突。
2カ月半ぶりのツアー復帰とともに始まったクレーシーズンではナダルの強さが戻って来たが、4大会に出場して唯一敗れた相手が24歳のドミニク・ティームだった。マドリードの準々決勝。昨年もナダルはティームにクレーコートで唯一の黒星をつけられている。
ナダルがキングなら、まさにクレーコートの若きプリンス。4回戦では復調ぶりに自信を高めていた錦織圭に対して、手のつけようのない完璧なプレーを見せた。豪快なショットがライン際の赤土をえぐるたび、才能に自信が宿ったときの怖さを見せつけられるようだった。
決勝戦は“ビッグ4”が完全に崩れて、台頭してきたネクストジェネレーションが世代交代に挑む現在の男子テニス界にふさわしいカードだっただろう。