“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
結婚式8日後に無所属からの正GK。
J2山口・藤嶋栄介、激動の5カ月間。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/06/11 12:50
藤嶋栄介は第18節まで全試合フル出場中。GKとしてプレーできる日々に喜びを感じている。
「出番が与えられた1試合に集中する」
そして迎えたJ2開幕戦。試合当日のメンバー発表で「藤嶋栄介」の名前が一番最初に呼ばれた。プロ人生で初の開幕スタメンが決まった瞬間だった。
「嬉しくて、涙を堪えながら『はい』と返事をした」
相手は熊本。今の自分があるのは熊本のおかげでもある。彼は恩返しの気持ちを籠めて、全力で90分間プレーし、4-1の勝利に貢献をした。試合後、真っ先に熊本のベンチに行き、深々と頭を下げた。感謝の言葉を全力で伝えた。
そして、6月9日の第18節・ファジアーノ岡山戦でも彼は安定感抜群のプレーを見せて、1-0の勝利に貢献。チームは2位に浮上した。
「今年は自分に対する甘さをすべて取り払って、『今年やれないと本当にサッカー選手を続けられない』という気持ちで取り組んでいるので、まだレギュラーを獲ったとは思っていません。俺にとっては1試合、1試合が本当に命がけ。一瞬、一瞬が自分の将来を左右すると思っているので、先のことを考えるのではなく、出番が与えられた1試合に集中することでやっている。まだまだです。やれる。まだまだやれると思っています」
なりふり構わず、全力で――。多くの人たちに支えられ、真のプロフェッショナルとしてのサッカー人生を歩み始めた藤嶋栄介。
今、筆者の手元には藤嶋の結婚式の写真がある。笑顔を浮かべる彼の姿を見ている。
「良かったな、栄介。家族と共に、これからだぞ」――。