球体とリズムBACK NUMBER
傑物クロップは「大統領にもなれる」。
その言動がフットボールを輝かせる。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2018/06/01 10:45
CLこそ準優勝に終わったが、サラーらをワールドクラスに引き上げた。クロップはやはり現代サッカーの名監督なのだ。
サラーが負傷した、あのシーンについて。
それから、こんな風に自己分析もした。
「(ドルトムントの監督としてバイエルンと決勝で対戦した5年前は)今よりもエキサイトしていた。これからどんなに素晴らしいことが起こるのだろうとか、人生に一度きりのチャンスだとか、いろんなことを期待していた。そしてとてつもなく強い相手に最高の試合をした。(負けた後に)またここに戻ってきたいと強く思ったよ。少し時間はかかったけど、うちのボーイズが私をここに連れてきてくれた。本当にハッピーだ」
だが、ハッピーエンドはまたもお預けになった。2016年のヨーロッパリーグを含め、3度目の準優勝。だけど和製英語のシルバーコレクターなんて呼ぶ気は僕にはしない。モー・サラー(イングランドでは、ほぼ“モー”で通っている)の涙の退場シーンを観て、セルヒオ・ラモスが好きじゃなくなった人もいるだろう。
クロップも「言い訳がましいことをいえば、バッドルーザーになってしまうが、あれは厳しすぎるチャレンジに見えた。レスリングのような」と試合後に話している。
ベイルのオーバーヘッドを称える心も。
エースの離脱と同等のインパクトを与えたのは、CL決勝史上最もひどい先制点と最も美しい決勝点だ。数字の上では、それが勝負を分けた。
レアルはギャレス・ベイルという1億ユーロの選手を途中出場させることができた。それは大きな違いでしたかと訊かれたクロップは、「ノー、と言いたいところだが、それは真実ではないだろう」とクラブとしての差も認めている。あのオーバーヘッドについては、「にわかに信じられないほどファンタスティックなゴール」とたたえた。