スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
大谷翔平の好調とトーレスの台頭。
新人王争いに強力な対抗馬出現か?
posted2018/05/26 08:00
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
AFLO
大谷翔平が順調に活躍の場を広げている。怪我に見舞われず、この調子で進んでいけば新人王はまず堅いと見るが、気になる部分が少しだけある。
といっても、本人の問題よりも環境の問題が大きい。具体的に述べてみよう。
話はやや旧聞に属するが、2週間ほど前の対ツインズ戦(5月12日)で奇妙な光景が見られた。
3対3の同点で迎えた11回裏、エンジェルスは2死三塁の勝ち越し機を得て、打席にアルバート・プーホルスを迎えた。三塁走者はマイク・トラウト。プーホルスのあとは、アンドレルトン・シモンズ、ジェフリー・マルテと右打者がつづく。ツインズの投手は右投げのトレヴァー・ヒルデンバーガー。
大谷以外に怖い左打者がいない。
ここで、ツインズのポール・モリター監督は、迷うことなくプーホルスの敬遠を指示した。つづくシモンズも敬遠して2死満塁。打席のマルテは、3人のなかで最も楽な相手だ。大谷はベンチで待機中。
大谷は、翌13日の先発登板が決まっていた。これまでの通例だと、登板前日の大谷はゲームに出てこない。
モリター監督は、大谷が出てこないことを明らかに見越していた。そもそも今季のエンジェルスは、左打者が弱い。コール・カルフーンは1割6分(144打数23安打)の低打率にあえいでいるし、ルイス・バルブエナの2割4分(121打数29安打)という数字もけっして自慢できたものではない。いいかえれば、大谷以外に怖い左打者はいない。
その大谷が代打に送られることはなかった。そのまま打席に立ったマルテは弱々しい投ゴロに討ち取られ、万事休す。ツインズは12回表に2点を奪ってエンジェルスを突き放した。