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鈴鹿GP契約満了、30回目の岐路。
アメリカで複数開催の来年は?
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2018/05/20 17:00
人数が減ったとはいえ、世界でも指折りに熱心な鈴鹿のファン。30回目の鈴鹿GPに朗報は届くだろうか。
ベッテルとホッケンハイムの思い出。
ホッケンハイムリンクがF1に登場してきたのは'77年。前年までドイツGPを開催してきたニュルブルクリンクで、ニキ・ラウダが瀕死の大事故に見舞われたために、安全性を考慮して開催地が変更されたのだ。
だが、ほとんど直線だけというレイアウトは、時速300km以上で走るF1を見るには最適だった。そのホッケンハイムリンクで少年時代、F1を観戦したのがセバスチャン・ベッテルだった。
「ホッケンハイムのストレート脇に父と並んで立ち見していたことをいまも覚えている。森の中から徐々にエンジン音が近づき、目の前をあっという間にF1マシンが通り過ぎて行ったあの感動は忘れられない」(ベッテル)
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その後、ホッケンハイムリンクはコースが改修され、レイアウトが変わったが、いまなおエンジン性能が問われる名うてのパワーサーキット。F1マシンのスピードを体感するのに絶好のサーキットであることには変わりない。
スパとともに愛される鈴鹿サーキット。
スパ・フランコルシャンでのベルギーGPは、F1がスタートした'50年からカレンダーに入っていた歴史ある一戦だ。こちらも安全性向上を目的に何度も改修されたが、その迫力はいまなお生き続けている。昨年のベルギーGPで68回目のポールポジションを獲得し、ミハエル・シューマッハーが持つ最多記録に並んだのがルイス・ハミルトンだった(その後、新記録を樹立し、現在も更新中)。
「僕が11歳だった1996年に、ここでマイケル(シューマッハー)の走りを初めて見た。その彼とここで並ぶことができたなんて、信じられないし、本当に名誉なこと。この日を忘れない」(ハミルトン)
その2人が、最も愛するサーキットが鈴鹿だ。
「鈴鹿での日本GPは、最も楽しみにしているひとつ。サーキットが素晴らしいだけでなく、世界のファンの前でレースができることは、レーシングドライバーとして最高の瞬間だ。鈴鹿には歴史がある。偉大なドライバーたちがここで数々のドラマを演じてきた。ほかの新しいサーキットでレースするのとは価値がまったく違う」(ハミルトン)