ROAD TO THE DERBY 2018BACK NUMBER
コズミックフォース、ダービーへ。
藤井調教助手が叶えた12年越しの夢。
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph byPhotostud
posted2018/05/17 07:00
切れる脚を使うわけではないが、前から行けた時の粘りが目を引くコズミックフォース。ダービーでは果たしてどうなる。
激走から中2週でダービーだが……。
直線、先頭に立つと、次から次へと後続勢が襲いかかってきた。しかし、イェッツトを振り切るとブレステイキングの追撃もかわし、先頭でゴールイン。ダービーの出走権を掌中に収めた。
「先頭に立ってからは見た目以上に余裕がある感じでした。勝てると思いましたよ」
そう言うのは騎乗したクリストフ・ルメールだ。一方、その様をみていた国枝は次のように口を開いた。
「よく粘ってくれましたね。こういう形の競馬が向くのだと思います」
前半のレースラップは59秒2。この流れを自らつかまえにいった。追い込み勢に差されても不思議ではない流れだったが、最後までしのぎにしのいだ。走破時計の1分58秒2も優秀だ。
ただし、この激走はもろ刃の剣でもある。好時計で走ってから中2週での日本ダービー挑戦。ただでさえ本番での好走歴の少ないプリンシパルS組で、果たしてこの臨戦過程はどう出るか……。
「正直、前走以上に良くするとか、維持するとか、いわゆる成長曲線を人間側でコントロールするのは難しいと思います。もちろん、ベストの状態で出せるよう、万全の策は取りますが、実際にそれに馬が応えてくれるかどうかは分かりません。
ただ、コズミックフォースの場合、ペットみたいに大人しい気性の馬なので、余計な心配をする必要がないし、実際に手もかかりません。このあたりのアドバンテージはあると思うので、ダービーでもそれなりに走ってくれると信じています」(国枝)
12年前、ダービー出走権を逃した記憶。
例年皐月賞組が有利なダービーで、コズミックフォースのライバルとなるのは、オウケンムーンだと、国枝は考えているのかもしれない。
さて、最後に藤井の弁をもう一度、記そう。先述した通り、過去にはGI馬も手掛けたことのあるベテランだが、担当馬が日本ダービーに駒を進めるのはこれが初めてだと言う。
「マツリダゴッホはダービーへの出走権を懸けて青葉賞に挑みました」
丁度干支がひと回りする12年前の話だった。当時は3着までに出走権が与えられたその前哨戦で愛馬は4着に敗れ、あと一歩に迫ったダービーへの出走権を逃していた。
「ホースマンなら皆が目指すレースです。毎年、18頭しか出られないその舞台に出させていただけるだけでも嬉しいです。あとはベストを尽くすだけです!!」