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ヴィクトリアマイル制した好騎乗。
瞬発力を引き出した幸のコース取り。 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph byYuji Takahashi

posted2018/05/14 11:15

ヴィクトリアマイル制した好騎乗。瞬発力を引き出した幸のコース取り。<Number Web> photograph by Yuji Takahashi

横一線からの壮絶な叩き合いになったヴィクトリアマイル。幸英明とジュールポレールが追撃を凌ぎきった。

最後の瞬発力を引き出した幸のコース取り。

 1着から4着までハナ、クビ、半馬身という僅差の激戦だった。そのため、どうしても直線の攻防に目が行きがちだが、幸の手綱さばきがもっとも冴えたのは、スタートしてから十数秒後だった。

 午後から降り出した雨が強くなり、良馬場で始まった芝コースを稍重に変えていた。時計が示しているように、さほど悪化はしていなかったが、それでも内埒から馬3頭ぶんほどは傷みが目立った。

 ジュールポレールは内の4番枠からスタートした。スタート後、幸はしばらく出たなりに走らせていたが、ゲートから1ハロンほどのところで外にスペースがあると見るや、すぐさまそこにジュールポレールを誘導し、おさまった。

 そうして序盤からずっと馬場のいいところを折り合って走らせることにより、最後の瞬発力を引き出したのだ。

ジュールポレールの1着は驚きではない。

 ジュールポレールにとって、初の重賞勝ちがGI制覇となった。この一戦を含め、全14戦のうち12戦で騎乗してきた幸はこう話す。

「馬の邪魔をしないように乗りました。雨は悪くなかったと思いますが、降りすぎても嫌だなと思っていました。もともと期待の大きかった馬ですし、これをきっかけに、もっと大きいところを獲れる馬だと思います」

 単勝19.4倍の8番人気という低評価だったが、昨年の3着馬だ。前走の阪神牝馬ステークスで5着に敗れたのは、ゴール前で進路が塞がる不利があったから。それでもコンマ2秒しか離されなかったし、何といっても、2012年のマイルチャンピオンシップを勝ったサダムパテックの半妹で、父はディープインパクトという超良血である。

 大敗したのは距離が合わなかった昨年のエリザベス女王杯だけで、それ以外は掲示板を外したことがない。

 いきなり6頭のGIホースを負かす走りをされても納得の実力馬なのだ。

 今回は、登録段階の出走馬決定賞金順で最下位の18番目だったが、この勝利で賞金面の心配はなくなった。

 次走は6月3日の安田記念を視野に入れている。大阪杯を制したスワーヴリチャードが最有力だろうが、ジュールポレール、リスグラシューという1、2着馬をはじめ、ここで上位に来た馬たちは、牡馬の強豪相手でも引けをとらないだろう。

 今年のマイル戦線は、ますます熱くなりそうだ。

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