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高萩洋次郎と大島僚太が示す
西野ジャパン入りへの説得力。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byGetty Images
posted2018/05/09 10:30
Jリーグで存在感を見せる高萩(左)と大島。2人が代表メンバー入りするのは何らおかしくないパフォーマンスだ。
タフさとパスセンスが高次元で融合。
今季の高萩は、守備を得意とする橋本拳人とボランチを組むことが多い。橋本は運動量を生かしてピッチを動き回るプレーが特徴だったが、今季から就任した長谷川健太監督からは「できるだけ後ろでバランスをとってほしい」という指示を受けている。
それは攻守バランスを保つ位置取りとも言えるが、もう1つは隣の高萩の攻撃センスをできるだけ前で生かすための方策でもあった。
昨季まではアンカーなどを任されることが多かった高萩は「今季は監督からも攻めに絡んで欲しいと言われている。前に行ける戦い方だと思う」と、久しぶりに託された攻撃的な役割を意気に感じながらプレーしている。
昔はトップ下や2列目に入り、パスセンスで前線を生かす典型的な10番タイプだった。そんな高萩が豪州や韓国でのプレー経験を経てタフなプレースタイルに変化した。
ただ日本に復帰した昨季は、変化した部分だけが取り上げられがちで、本来の持ち味であるパス能力やテクニックをチームに落とし込めずにいた。
だが今は、守備でのハードワークもこなしながら、攻撃に転じれば自分の武器を最大限発揮して周囲を操る仕事が求められている。昔から非凡だった攻撃面と、ここ数年で身につけたプレー強度や守備力。それを高い次元でピッチ上で表現しているのが、いまの高萩である。
ボールを奪われた後の執着心が凄い。
実際に川崎戦でも、攻守両面での働きぶりが際立った。ボールを奪われた後の球際への寄せはスピード、激しさともにJリーグ屈指のレベル。何よりボールへの執着心は味方、敵問わず、この試合の中では群を抜いていた。
ガツンと相手にぶつかり、そこでボールを奪えれば一気に攻めに転じる。守備からの切り替えの速さは意識だけでなく、技術力が高いからこそ成立するものだ。
また味方の速い動き出しに対して、時に正確に足元へボールを届け、時に相手の間隙を突くスルーパスを狙う。通れば大チャンス、止められてもまたすぐに頭と体のチャンネルを守備モードに切り替え、相手に詰めていく。プレーの質と量のバランスが、明らかに昨季よりも良い状態であることが見て取れるのだ。