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“棚橋弘至時代”は本当に終わった?
オカダに敗れ涙し、それでもまだ……。
posted2018/05/07 17:00
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
これほど会場が一体化した「棚橋コール」を挑戦者・棚橋弘至はどう感じたのだろうか。
こんな大きな声援を聞くのはいつ以来だろう。
棚橋が王者オカダ・カズチカに挑んだIWGPヘビー級戦は、5月4日、福岡国際センターで新日本プロレス「レスリングどんたく」のメインイベントとして行われた。2人の防衛記録としてはV11対V11で並んでいたが、誰の目にも、今のオカダの強さは棚橋を上回っていた。
それでも棚橋は、捨て身で王者に向かっていった。
ファンはそんな状況を感じ取るように、棚橋に熱い声援を送っていた。東京や札幌から福岡までやってきた棚橋のファンもいた。もしかしたら、棚橋がやってくれるんじゃないか、というわずかな望みを抱いて……。
わずかな望みといったら、41歳のベテランに失礼かもしれないが、現在のオカダの強さは抜きん出たものがあり、それを否定するのは簡単ではない。
そんな強いオカダに、オカダに言わせれば「ボロボロの体」の棚橋は向かっていった。
美しくもあり、飛ぶこともできた棚橋の姿。
この夜の棚橋のファイトは、どこかサバサバと割り切ったようにも見えて、それでいて悲壮感をうちに秘めたような……不思議な空間を作り出していた。
棚橋のドラゴンスクリューはきれいだった。「飛べる」と宣言した男は場外にもハイフライフローで飛んで見せた。リング内での3発のハイフライフローの内2発は、オカダのヒザとドロップキックに迎撃されて苦悶することにはなったが。
試合後、オカダも「(棚橋を)なめていた」と少し反省するほどだった。