ROAD TO THE DERBY 2018BACK NUMBER
世代最強の「運」を味方に。
キタノコマンドールは府中で輝く。
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph byShiro Miyake
posted2018/05/02 11:15
3戦連続で最速の上がり3ハロンを記録しているキタノコマンドール。直線が延びる府中で、その威力はさらに増すはずだ。
「生徒会長のようなタイプ」
迎えたクラシック第1弾、皐月賞。大一番前の馬の状態については次のように述懐する。
「体質強化と、気温も暖かくなってきたせいか、使う度にコズみがマシになっていきました。もちろんまだ固い面はあるけど、皐月賞の頃にはほとんど気にならないくらいになっていました」
デビュー2戦を阪神で使ってきただけに、初めての関東圏への輸送は気にならなかったのか? そのあたりを伺うと、過去に管理した天皇賞馬の名を挙げ説明してくれた。
「トーセンジョーダン('11年、秋の天皇賞1着など)は精神的にどっしりしたタイプだったけど、キタノコマンドールは3歳のこの時期にしてすでに同じようにしっかりした面があります。まるで古馬みたい。人間で言えば生徒会長のようなタイプ。だから、輸送がどうとか、そういった心配は一切しなくて大丈夫でした」
当日はプラス12kgでデビュー以来、初めて大台に乗る502kgの馬体重だった。このあたりにも精神面の図太さが出たと池江は笑う。
皐月賞は位置取りの時点で勝負あり。
レースは前へ行った3頭、すなわちアイトーン、ジェネラーレウーノ、ジュンヴァルロが後続を離して1000m通過が59秒2。キタノコマンドールは向こう正面で最後方まで下がる位置取りとなった。
「59秒台といっても速いのは前の3頭だけでした。4番手以下は前とかなり差が開いていたのでむしろ遅いくらい」
正直、勝ったエポカドーロの位置にいないと厳しかったと池江は続けた。
その勝ち馬は前3頭から離れた4番手で実質的に馬群を引っ張って逃げているような形。最後方にいたキタノコマンドールはこの馬と馬群をサンドイッチするような形。つまり対極に近い形で追走していた。
「流れに加え、稍重という馬場状態もあって、あそこから追い込むのはかなり難しい。そういう競馬になってしまいました」
そんな厳しい状況下でも、直線に向くとグングン追い上げてきた。上がり3ハロンの推定34秒8というラップは、ステルヴィオ、グレイルと並んで出走16頭中トップの数字だ。
「あの向かない展開にも関わらずよく掲示板にのってきたと思いました。やはり能力のある馬です」