ROAD TO THE DERBY 2018BACK NUMBER
世代最強の「運」を味方に。
キタノコマンドールは府中で輝く。
posted2018/05/02 11:15
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph by
Shiro Miyake
「野本さんとは5~6年前からプライベートで面識がありました」
調教師の池江泰寿はそう語る。
“野本さん”こと野本巧とはその後、2年前に北海道の牧場でばったり再会した。
「その時に1万口で誰もが入れるクラブ馬主を立ち上げようというプランを聞き『誰もが気楽に持てる一口クラブとは面白いな』と賛同しました」
やがて野本のプランはDMMバヌーシーという形で具現化される。そして、当時の会話を覚えていた彼から池江に連絡が入った。こうして預かることになったのがキタノコマンドールだった。
「1歳の時にセリ場の下見所でみて、雄大な良い馬だという第一印象を受けました」
父はディープインパクトで母はトゥザヴィクトリーの妹。ディープもトゥザヴィクトリーも父泰郎の管理馬で、池江にとっては縁の深い血統。すぐに気に入った。
「ただ、球節から下、つなぎがかなり立っていたのでダート馬かと思いました」
2戦連続で予想を裏切る勝利。
それでも自身の方針に従い、新馬戦は芝でおろした。
結果、ここを勝利するがこれは幸運にも恵まれたと語る。もちろん能力があればこそ、の勝利ではあるが、この新馬勝ちは少し意外であり、ゆえに“運”を感じたそうだ。
「デビュー前の調教ではサトノグロワールにかないませんでした。だから使い分けるつもりだったのに除外されて結局、同じレースに出ることに。しかし、実戦に行ったらサトノグロワールに勝ってしまったんです」
返す刀で2戦目のすみれSも快勝した。それも3コーナーでは8頭立てとはいえ最後方。コーナーで大外を回って追い上げ、直線は内にモタれながらも上がり3ハロン33秒台の脚で差し切るという強い内容だった。
「デビュー戦にしても2戦目にしても、良い意味で予想を裏切られました。この勝ち方を見た時に、自信を持ってクラシックへ臨めると思いました」