試合の流れを読む確かさと、責任感の大きさと。

　このシーンについて、岡山の練習場である政田サッカー場で彼に直接真意を聞いてみた。

「（自分から見て）左の嶋田選手にボールが渡った時、中にカバーに入っていた河面選手が右サイドに出て行くのが見えたんです。この時点で一番ケアすべきは嶋田選手からの直接のクロスだったのですが、『サイドチェンジからクロスが来るかもしれない』と、もう1つの予測を組み入れた対応にすることにしたんです」

　正確にあの時のシーンを回顧してくれた彼を見て、首位を走るチームの守護神たる所以を感じた。すると彼はさらにこう続けた。

「でも……今季喫した3失点とも完全に防げた失点なんです。あれは自分の甘さです。（大宮戦で先制された）大前選手のゴールもチームとして1回しっかりとクリアできていたはずだったのですが、守備に戻すべきところに味方がいなかったのが原因です。

　そこに対して僕がしっかりと指示を出せなかった。僕がしっかりとコーチングで指摘できていれば……」

すべての経験にちゃんと意味がある、と。

　話の最後に筆者が「大宮戦の11分のシーンと、今の反省点の言葉はCBをやっていた経験が完全に生きているよね。コーチングも視野の確保もGK視点だけでなく、CB視点も入っているからこそだし」と伝えると、一森は笑顔を浮かべてこう答えた。

「そうかもしれないですね。GKとしてもフィールドプレーヤーとしてもすべての経験に意味があるってことですよね。

　フィールドプレーヤーをやることでGKとしても成長できる確信があったから……もちろんすべてに納得はしていないけど、腐ること無くサッカーに打ち込むことができた。それに僕は絶対に文句は言わない性格ですから（笑）」