“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
J2の首位を走るファジアーノ岡山。
守護神・一森純はCBとの二刀流!?
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/04/21 07:00
左はセレッソ大阪U-18時代、CBとしてプレーしていた一森純。右は現在のGK姿。
お店で働きながらサッカーの練習を……。
「サッカーだけでは食べて行けないので、山口のスポーツ用品店で働いていました。
朝9時から12時まで練習して、その後すぐに14時からの出勤に向けて準備をしないといけなくて……自主トレはおろかクールダウンすらもできませんでした。
19時くらいまで勤務して、そこからご飯を食べて風呂に入ったらもう寝る時間。その繰り返しは本当に肉体的にキツかったです。
それにちょうど入団1年目の2014年はブラジルW杯の時期で、サッカー界も盛り上がっていた。スポーツ用品店のポスターには1学年上の山口蛍が写っていたり、2012年のロンドン五輪のポスターもあって、扇原、健勇の姿があった。それを眺めていると、『俺は何をやっているんだ』と思いましたね。
やっぱり同じ環境で同じ舞台でやっていた仲間が、上の舞台でやっている訳ですし、相当悔しかった。でも、早く追いつきたいという一心で、よりサッカーに向き合うことができました。JFLの1年間でサッカーに対する想いが強くなりました」
試合の悪い流れを断ち切るビッグプレー。
レノファが翌2015年にJ3に昇格して、ようやくサッカー中心の生活を手に入れることができた一森。
「その頃には、すごく時間の使い方が上手くなっていたので」と語る一森は、徹底的にサッカー中心の生活を送ることにしたという。そして、冒頭でも触れたようにあっという間にチームはJ2に昇格。チーム昇格に大きく貢献して評価を上げた一森は、2016年末に岡山に移籍。より成長した姿を、岡山の地で見せている。
「山口では攻撃の練習が大半で、GKも凄くビルドアップを求められたので、CBでの経験がさらに生きていましたね。岡山ではセットプレー、インプレーでの『1本止める大事さ』が身にしみるようになりました」
J2第9節のアウェー・大宮アルディージャ戦。
1-1のドローで終わったこの一戦で、一森の成長の証を強く感じさせられたプレーがあった。
前半11分、先制して勢いに乗っていた大宮は、右サイドで嶋田がボールを持つと、左サイドでフリーになったDF河面旺成に大きくサイドチェンジ。河面はトラップして前に持ち出すと、左足でライナークロスを送り込む。これをファーサイドでFW富山貴光がドンピシャヘッドであわせたのだが……一森はまったく動じることなく、正確に両手で弾き返したのだ。
先制された直後だっただけに、立て続けの失点はチームに大きなダメージを与えかねなかった。
チームに生じ始めた悪い流れを断ち切ったという意味でも、このプレーは試合を左右するビッグプレーであった。