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8試合でわずか2失点の驚異的堅守。
広島・林卓人「動かぬ」守護神哲学。
text by
岩崎龍一Ryuichi Iwasaki
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/04/18 08:00
首位を走る広島の最後方を支える林卓人。その安定感で2、3月のJ1月間MVPに輝いた。
今季、PKを3本中2本ストップしている。
今シーズン、3本のPKがあった。そのうち林は2本を止めている。第3節の鹿島アントラーズ戦と、第6節の柏戦。その両試合はともに「ウノ・ゼロ」の勝利だ。単純に計算すれば林は、金崎夢生、クリスティアーノのシュートをストップした2つのセーブだけでチームに勝ち点6をもたらしたことになる。
柏戦後のミックスゾーンで、サッカーを構成する主要な要素に、記憶があるのだと気づかせられる。PKの場面に関してのことだ。
「何年か前にクリスティアーノ選手にはPKを決められた。その時はコースは合っていたけれど、スピードに間に合わなかったというイメージがある。今日はそのボールスピードに遅れないようにと心掛けた」
シュートを体の正面で抑えるのが一番好き。
近年はGKがビルドアップに参加し、ペナルティエリアを飛び出すことが普通になった。そのために、アグレッシブなGKに対しての認識が間違って捉えられている可能性がある。少なくともシュートストップの場面に関しては、無闇に動くのはプラスにはならない。動くことにより目線の位置が変わる。それはシュートに対しての目測の誤りを招く可能性を高めることにしかならないのだ。
「自分の中で一番好きなプレーは、シュートを体の正面で抑えること。GKにとって先に動いていい状況というのは絶対にないと思うんです。GK心理として我慢するのは難しいけれど、ぎりぎりまで地面に足を着けて動かない。そのことで相手に迷いも生じると思っています」
ゼロで抑えることの言い知れぬ満足感。それは基本的に受け身の立場であるGKに与えられた、特別な報酬だ。
自らの持つシーズン最多のクリーンシートは、仙台時代の2011年に記録した14試合。林は記録更新を視野に入れ、今日もゴール前で特別な存在感を放つ。