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8試合でわずか2失点の驚異的堅守。
広島・林卓人「動かぬ」守護神哲学。
text by
岩崎龍一Ryuichi Iwasaki
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/04/18 08:00
首位を走る広島の最後方を支える林卓人。その安定感で2、3月のJ1月間MVPに輝いた。
的確なコーチングと基本への忠実さ。
感心してしまうほど基本に忠実だ。例えばポジショニングひとつを取ってみても、緻密に計算し尽くされている。もし立ち位置が30cmずれれば、ボール1個分のシュートコースが生まれる。それを林は的確なコーチングでDFを動かし、自ら足を運ぶことで常に修正し続けている。DFとの連係で守りを機能させることに長けているのだ。
第5節の1-0で勝利した川崎フロンターレ戦。前半11分に大久保嘉人のシュートを右手一本で弾き出したプレーが、まさにそれだった。
「自分から動かなければDFもちゃんと寄せてくれる。ビッグセーブというよりは、チーム全体で守った守備なんじゃないかなと思います」
城福監督も「頼もしい」と全幅の信頼。
2007年のシーズン途中にベガルタ仙台に加入して以来、2014年に復帰した広島でも正GKのポジションを絶対的なものとしてきた。築かれた連続出場記録は、J2、J1通算で235試合。試合があれば、ゴールマウスの前に立つのは当たり前だった。その意味で昨シーズンは、初めて違う立場に置かれ、複雑な思いでサッカーに接した。
チームの予想外の不振が招いた、GKの変更。森保一監督の最後の指揮となった7月1日の第17節浦和戦でベンチを温めることとなった林は、次々節ではサブからも外れた。再び先発に復帰したのは約4カ月後の、リーグも残り4試合の時点。10月29日の第31節浦和戦だった。
負のスパイラルにはまったという側面はあるが、一時は失いかけたポジション。今シーズン、林は復権した。新たに就任した城福浩監督が、経験豊富な35歳のゴーリーに全幅の信頼を置いたからだ。
「GKが安定するとチームが安定する。彼は鹿島戦ではPKを止めたけれど、ミスもあったと認識しながらプレーしていた。レベルアップに対して深く考えている。そういう意味でも守備のリーダーとして頼もしい」