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イラン代表には政治的圧力が存在?
追放された主力はW杯に出られるか。
text by
杉山孝Takashi Sugiyama
photograph byGetty Images
posted2018/04/17 08:00
アジアで最も安定した力を見せているイラン。しかしショジャエイのように複雑な問題を抱えた選手もいる。
イスラエルとの対戦を禁止というルール。
その33歳のMFは昨年8月、突然代表チームから外された。カルロス・ケイロス監督は「競技的な理由」と語ったが、額面通りに受け取る者はいなかった。
ショジャエイ本人にも、“予感”はあったはずだ。だから、一度は抵抗した。7月28日のヨーロッパリーグ予選3回戦・第1レグでは、当時所属していたギリシャのパニオニオスから罰金処分を受けようとも、アウェイでのプレーを拒否。代表チームの同僚でもあるエフサン・ハジサフィとともに、遠征メンバーにも入らなかった。
しかし、初戦を落として迎えたホームでの第2レグでは、2人そろってフル出場。初戦同様0-1で落として大会から姿を消したが、そこから事態は悪化した。怒りに火をつけてしまったのだ。ファンではなく、母国の政府の怒りに。
イランは、イスラエル人国家の存在を認めていない。そのため国民に対し、イスラエルのチームや選手とのスポーツでの対戦を禁じている。2人が所属するパニオニオスが対戦したのは、イスラエルのマッカビ・テルアビブだった。イランスポーツ省の副大臣、モハメド・レザは「忌まわしい政権(のチーム)と対戦したことは、到底受け入れられない。イランのレッドラインを越えてしまった」と、2人の永久追放を示唆した。
ケイロス監督は政府の圧力を否定したが。
ケイロス監督は、政府からの圧力を否定した。レッドラインを越えたはずの2人のうち、ハジサフィの招集は続けたことが、政治の介入を認めないFIFAからの罰則(政治介入を許さないFIFAは、過去にマリやインドネシアの国際大会出場を停止している)適用を回避する術だったという確証はない。
だが8月以降、ショジャエイが代表チームでプレーすることがなかった事実は揺らがない。
どういう経緯があったのかは不明だ。W杯イヤーに入った今年3月、チュニジアとの親善試合に向けたメンバーリストにショジャエイの名はあった。指揮官が「世界トップとの差は大きい」と嘆き、本番への緊張感が増す中、協会や政府も白旗を挙げたのかもしれない。SNS上で巻き起こった、各国サッカーファンの怒りの声が届いた可能性も、ゼロではない。