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村田諒太の初防衛戦に死角はない。
唯一の敵は「圧倒したい」欲だけ。

posted2018/04/13 11:30

 
村田諒太の初防衛戦に死角はない。唯一の敵は「圧倒したい」欲だけ。<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

村田諒太の仕上がりに死角は見当たらない。落ち着いて試合に入ることができれば、初防衛はおのずと成功するはずだ。

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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Hiroaki Yamaguchi

 WBA世界ミドル級チャンピオンの村田諒太(帝拳)の初防衛戦が15日に迫った。

 昨年10月、2度目の挑戦で世界王者となったロンドン五輪金メダリストは、今年に入って東京ドーム進出プランをぶち上げるなど、さらなる夢に向かってアクセルを踏み続ける。その試金石となるエマヌエーレ・ブランダムラ(イタリア)との初防衛戦を占ってみよう。

 村田は昨年、アッサン・エンダム(フランス)と拳を2度交え、5月の初戦を不運な判定で落とし、10月の再戦でTKO勝ちして王者となった。リングの上で思わず涙を流した姿に、五輪王者としてのプレッシャーがいかに大きかったかを見たものだった。

 その村田の初防衛戦の相手に抜擢されたのが、ブランダムラだ。戦績は29戦27勝5KO 2敗の38歳。KO数の少なさと38歳という年齢から、だれもが「恐るるに足らず」という印象を持つに違いない。村田本人も「自分でも下馬評は有利と思っている」と言い切っている。

 では本当に村田があっさり勝利を手にすると言えるのだろうか。村田の豪快な“KOショー”を期待していいのだろうか。そう考えるとクエスチョンマークが浮かんでくる。

山中慎介「こう試合は一番難しい」

「こういう試合は一番難しいと思いますよ」と語るのは、村田の南京都高と帝拳ジムの先輩であり、先ごろ引退を表明した元WBC世界バンタム級王者の山中慎介さんだ。

 その理由は2つある。対戦相手という外的要因と、村田の心理面という内的要因だ。

 ブランダムラは本人曰く「カメレオン」の異名を持つ。

 相手のタイプに合わせて柔軟に戦えるという意味だ。9日の公開練習を見る限り、ブランダムラはKO数の少なさ通りにパワーがなく、巧みな試合運びで勝利を重ねてきたという印象を与えた。怖さは感じないが、どちらかといえばディフェンシブで、相手をイライラさせる術に長けたタイプだと言える。

 挑戦者のパーソナリティーに目を向けると、生後8カ月で母親がいなくなり、父方の祖父母のもとで育てられ「複雑な少年時代」を送った。

 18歳でボクシングをはじめ、20年で世界挑戦までこぎつけたが、現在も生計の柱はガードマンの仕事だ。今回の試合に勝利し、人生を好転させようという意欲には並々ならぬものがあるだろう。

【次ページ】 パワーで強引に勝負に出ると危ない。

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