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村田諒太の初防衛戦に死角はない。
唯一の敵は「圧倒したい」欲だけ。 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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photograph byHiroaki Yamaguchi

posted2018/04/13 11:30

村田諒太の初防衛戦に死角はない。唯一の敵は「圧倒したい」欲だけ。<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

村田諒太の仕上がりに死角は見当たらない。落ち着いて試合に入ることができれば、初防衛はおのずと成功するはずだ。

パワーで強引に勝負に出ると危ない。

 パワーで上回る村田が強引に勝負に出るようだと、おそらくブランダムラは「しめた」と思うはずだ。前半は目いっぱい動いて村田を空転させ、少ないながらも自らの軽打をヒットさせる。試合を終盤までもつれさせたらこっちのもの。KOが少ないということは、裏を返せばフルラウンドの攻防はお手のものなのである。

 では、内的要因とは何か。ボクシングには「初防衛戦はタイトルを獲るよりも難しい」という格言がある。その心を村田本人が語っている。

「(こういう試合では)1ラウンド目から圧倒しようという気になりがち。チャンピオンの姿を見せたいという気持ちがはやりすぎるのが、初防衛戦が難しいと言われる正体だと思う。その気持ちをどれだけ抑えた状態でリングに上がれるか、リングの上で気持ちをおさえてボクシングができるかがひとつのカギ」

「圧倒したい」という欲で崩れないために。

 村田はアマチュア時代、'11年の世界選手権で銀メダルを獲得したあと「次はオリンピックで金メダルを獲らなくちゃいけない、他を圧倒しなくちゃいけない」という気持ちに陥り、己のボクシングを崩した経験を持つ。

 昨年のエンダム第2戦でも「2試合目はもっと圧倒しなくちゃいけない」と硬くなり、必ずしもいいコンディションが作れなかったという。

 だからこそ今回は「いかに冷静に戦えるか」がテーマになる。いいところを見せようと気負うと、体が前に出すぎて距離がつぶれてしまい、思うような攻撃ができなくなってしまうのだ。

「プレッシャーをかけながらも自分が打てる距離で戦うこと。エンダムとの再戦でも1、2ラウンドは体が前に出すぎてしまった。その反省もいかして、自分の距離を保てれば、結果はついてくると思う」

【次ページ】 現時点で死角は見当たらない。

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