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パシュート金の菊池彩花が涙の引退。
黙々と1人で滑る姿を、恩師が告白。
posted2018/04/12 07:30
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
AFLO SPORT
芯の強さがにじみ出る人。
菊池彩花の印象を一言で表すと、そんな言葉が思い浮かぶ。
平昌五輪スピードスケート女子チームパシュートで金メダルを獲得した菊池彩花が、4月8日、現役引退を表明した。所属する富士急行スケート部の創部50周年記念祝賀会の席で明らかにした。
長野県で生まれ、小4のときに地元で行なわれた'98年長野五輪で清水宏保や岡崎朋美がメダルを手にした姿にあこがれた。以来、「自分もいつか五輪の舞台に立ちたい」と夢を見ながら鍛錬を重ねた。それからちょうど20年目に、自身2度目の五輪で頂点をつかんだ。富士急スケート部にとっても50年目にして悲願の金メダルだった。
「気持ちとしてはやりきった部分が大きい」
達成感。完全燃焼。涙も笑顔もすべて今の偽らざる感情だ。それを支えたのは強い意志だった――。
高校時代までは国内上位ながら平凡な選手だった。
高校時代の成績はインターハイで2位になったのが最高。中3で五輪に出た高木美帆を筆頭に、高木菜那、佐藤綾乃、押切美沙紀、短距離の小平奈緒といった、ジュニア時代から国際大会の出場経験を持つ選手がそろう五輪メンバーの中で、菊池の経歴は平凡だった。
「インターハイと言っても2番とか3番とか。トップは取れなかったですし、社会人に入ってもすぐにワールドカップ(W杯)に行けたというわけではなかったんです。今一緒にいる選手たちはいろんな世界経験があるんですけど、 私はシニアでやっと選ばれたという形。他のチームメイトたちが小さい頃からお互いに知っているという関係性が羨ましいなって思うこともありました」
平昌五輪を目指すナショナルチームの合宿で、こんなふうに話していたこともある。