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湘南のRIZAP傘下入りは吉か凶か。
市民クラブ文化と資本力の融合。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byAFLO
posted2018/04/09 13:50
左から、RIZAPの瀬戸健社長、湘南ベルマーレの眞壁潔会長、三栄建築設計の小池信三社長。この三角形で新たな道が始まっていく。
クラブの好感度は、苦しさと表裏だった。
選手を抜かれても、抜かれても、湘南は立ち上がってきた。立ち上がるだけでなく、魅力的なサッカーを見せてきた。ビッグクラブに敢然と立ち向かう湘南の姿は、ロマンさえ感じさせるものだっただろう。
だが、クラブに残りたい選手を引き留められない事態に、当事者たちは胸をえぐられるような痛みを感じてきた。一般的なサッカーファンが湘南に寄せる好感は、クラブの経営陣にとって重い十字架にも似たものだったに違いない。
'99年の親会社撤退からクラブに関わってきた眞壁潔会長は、「現実を見ないといけない」と話す。
「選手を引き留めたくても、J1の平均的な給料と差がある。ほとんどの選手は、泣きながら離れていきました。市民クラブとして評価されてきたが、頑張っている仲間たちを不幸にしたくない。
プロ野球の広島カープが市民球団と言われるが、松田オーナーがいて資本を持っているから、選手もファンも安心感がある。それによって様々なバックアップが得られる」
10億円以上の資金は、育成と強化に。
責任企業の支援を受けることは、長く温めてきた構想だった。
一方で、お金を出してもらえるならどこでもいい、というわけではなかった。市民クラブとして培ってきた理念に共鳴し、ともに歩んでいけるパートナーとしてRIZAPグループと手を組んだのである。
RIZAPグループからは、'18年から'20年までに10億円以上が投資される。新たに得た資金は、主に育成と強化に注入される。
J1の横浜F・マリノスと川崎フロンターレ、J2の横浜FC、J3のSC相模原とY.S.C.C横浜がホームタウンを置く神奈川県は、全国でも屈指の育成激戦区だ。そのなかで湘南は、若年層の代表に絶えず選手を送り込むレベルを保っている。ただ、中学生年代のジュニアユースについては、年間で5000万円の赤字を計上してきた。