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上原浩治の制球力はやはり天才的。
ミリ単位の軌道を映像化する異能。 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byKyodo News

posted2018/04/04 11:30

上原浩治の制球力はやはり天才的。ミリ単位の軌道を映像化する異能。<Number Web> photograph by Kyodo News

早くも日本のプロ野球に適応しつつある上原浩治。彼が9回におさまれば、巨人の勝利の方程式は完成度を増すだろう。

黒田博樹も苦しんだ「日本への適応」。

 ただし、アメリカで長くプレーすると、日本に帰ってきた時に、思わぬ適応が求められる場合がある。2015年に広島に復帰した黒田博樹が、そのシーズンにこんな話をしてくれた。

「革がツルツルしているメジャーの公式球に慣れていたので、革がしっとりとして握りやすい日本のボールだと、変化球を投げる時に、ちょっと引っかかり過ぎる時があるんです。時々ワンバウンドを投げてしまうことがあるので、このあたりは適応しなければいけない部分です」

 9年間、メジャーリーグでプレーした上原の制球力にどんな変化が起きるのか、阪神戦で注目していたのだが、2試合を見る限りは大きな変化は見受けられなかった。

 ストレートとスプリットの2つの球種だけでどんどんストライクを先行させ、打者との駆け引きを有利に展開していく。

 2日間で23球、内容は次の通りだ。

3月31日
6番 大山
スプリット 空振り
ストレート 空振り
スプリット 空振り三振 ワンバウンド

7番 糸原
ストレート 見逃しストライク
ストレート 空振り
ストレート ボール
ストレート 左ライナー

8番 高山
スプリット ボール
スプリット 空振り
スプリット 空振り
スプリット 二ゴロ

4月1日
1番 高山
スプリット 空振り
ストレート ファウル
ストレート ファウル
スプリット 投ゴロ

2番 鳥谷
ストレート 三フライ

3番 糸井
スプリット 見逃しストライク 
スプリット ボール
スプリット ファウル
スプリット ファウル
スプリット ファウル
スプリット ボール  ワンバウンド
スプリット 三ゴロ

 23球中、ストライクが実に19球を数えた。阪神打線は上原に追い込まれると分が悪いと見たか、浅いカウントからどんどん手を出していったが、かえって上原に有利なカウントを作ることになっていた。

 また、ワンバウンドが2球あったが(31日の大山の3球目、1日の糸井に対する6球目)、いずれもボール球を振らせる意図を持ったもので、コントロールの乱れではなかった。

 この2試合を見る限り、上原の制球力は今や巨人の大きな「財産」になっている。

【次ページ】 クローザーは、勝ち取るもの。

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