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本田の兄・弘幸氏はなぜ代理人に?
「圭佑が“脇役”くらいでないと」 

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鈴木忠平

鈴木忠平Tadahira Suzuki

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photograph byAtsushi Kondo

posted2018/03/20 11:30

本田の兄・弘幸氏はなぜ代理人に?「圭佑が“脇役”くらいでないと」<Number Web> photograph by Atsushi Kondo

中学時代は大阪選抜に選ばれ、名門・帝京高校へ進み、アルゼンチン3部でプロとしてプレーした経歴も持つ。右膝故障で22歳で引退した。

鈴木大輔がスペイン2部に渡った理由。

 弘幸氏の言葉を象徴するような選手として例えば、「HEROE」と契約している鈴木大輔という選手がいる。

 石川県生まれの28歳。星稜高で選手権に出場し、J1新潟へ。ロンドン五輪代表として準決勝進出に貢献すると、柏へ移籍後の'13年にはA代表にも選ばれた。そんな日本屈指のセンターバックは今、スペイン2部のヒムナスティック・デ・タラゴナというクラブにいる。

 スペインへ渡った当時、国内クラブから条件のいいオファーは数多くあったという。ただ、鈴木は欧州に行きたいという意志を明確にしていたという。代理人として言葉や文化の面でのストレスやリスクを説明したが、「弘幸さん、明日にでもチケットを取って、行きましょう」と言ってきた。

「今が行くべきタイミングだとわかっていたんでしょうね。目指しているものが大きい。そこに対して自分に足りないものが見えている。リスクは承知で、覚悟を決めていた。そういう男なんで、代理人として人生をかけてサポートしたいと思いますよね」

 無謀にヨーロッパへ行きたいと言ったわけではない。20歳の頃に出会ってから、ずっとそういう思いを胸に秘めながら、国内での実績を積み上げ、Jリーグトップレベルを維持し、代表への足がかりを地道につくった。

 そして、いざ時が来たら、彼は航空券以外、何も求めず海を渡った。

自分で勝敗を背負う覚悟を持つ選手を。

 それはピッチ上で、センターフォワードやセンターバックが求められるものと同じであるような気がする。何も頼らず、他の誰でもない自分1人で勝敗を背負う覚悟である。

「日本では、育成年代からグループ戦術を重きに置くことからカバーリングやサポートできる選手が評価されると思います。

 時には突破されてしまった選手が、味方にカバーやサポート不足を指摘するシーンも見受けられますが、世界では、まず突破された選手が、ターゲットとなり、1対1で負けた事に向き合いアプローチしていきます。

 オフェンスの際もあらゆるシーンで数的有利が作れなければ、自身で一枚はがし、突破しなければならないし、ボールロストせずキープし、次の展開を見つけなければならない。そういった選手をどれだけ生み出せるかなど、とよく考えます」

 これは、ここ何年も日本の課題として挙げられている部分であり、本田圭佑が代表チームの中心としていられた理由ではないだろうか。そして、そういう部分に秀でた他の選手が多く出現すれば、弘幸氏の言葉通り、彼は“脇役”になり、日本サッカーはかつてないほど底上げされるのかもしれない。

【次ページ】 代理人・弘幸氏が喜びを感じる瞬間。

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