マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
新庄の母校・西日本短大附に逸材が。
潜在力・中村宜聖と名手・近藤大樹。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph bySports Graphic Number
posted2018/03/18 17:00
西日本短大附高校の中村宜聖(左)と近藤大樹。2年連続でプロ入りという可能性も低くはない逸材たちだ。
近藤大樹のあまりに見事なイレギュラー処理。
中村の打球に動けなかったショートが、名手・近藤大樹だ。
高校生を名手と呼ぶことは、めったにしない。名手とは、「神」に近い存在として、敬意をもって使う表現だ。
昨年の高校生遊撃手なら、巨人に進んだ湯浅大(健大高崎高)と楽天に入団した西巻賢二(仙台育英高)の2人だけだったし、その前の年は高校生には見当たらなかったから、西武に進んで新人王を獲得した源田壮亮(トヨタ自動車)を名手と呼んだが、実は、あまり信じてもらえなかった。
まず、エラーをしない。正面の打球に、サッと身をひるがえしてグラブサイドに打球のラインを合わせ、体を送球方向(一塁)にずらしながら捕球、そのままの流れでスローイングにうつる。
捕りました、投げました……じゃない。投げるための準備動作としての捕球だから、スローイングに無理がなく自然な流れで、だからまったくぬかりがない。
併殺時の二塁への短い送球も強すぎず、弱すぎず、二塁手が送球しやすいように気遣って投げて、イレギュラーの処理なんかもう見事というしかない。
「次の打球がイレギュラーするってわかっていて、しかもイレギュラーしたボールが自分のどこに来るかもわかっている。そういうふうにしか見えんのですよ、私らにも」
西村監督があきれるように笑う。
「新2年生ですけど、キャプテンにしたろうかな」
「新2年生ですけど、コイツ、キャプテンにしたろうかなと思うこと、ちょいちょいあるんですよ。こんなしっかりした人格とリーダーシップ持ったヤツ、私20年近く見てますけど、ウチのチームで初めてじゃないですかね」
数日前、そんな近藤大樹遊撃手が珍しく“泣き”を入れてきたという。
監督、なんか最近野球に集中しきれん自分がおるとですけん、なんでですかね……。
「ぜーんぜんOKなんですよ。十分集中できてるんですよね、私から見ても。なんかもう、私らのわからん次元のところに行ってしまったのかなぁって、ちょっとさみしくなってですねぇ……」
正面も、横も、前も後ろも完璧にこなして、なお自らのパフォーマンスに疑念を抱く。“支配する”とは、こういうことを表すのか。