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広島にまたも現れた大物高校生捕手。
昨年は中村奨成、今年は黒川直哉。

posted2018/03/20 07:30

 
広島にまたも現れた大物高校生捕手。昨年は中村奨成、今年は黒川直哉。<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

捕手としてのたたずまいが、とても経験2年とは思えない黒川直哉。広島の地には名捕手の伝統があるのだろうか。

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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 久しぶりに広島にやってきたのは、地元の放送局の番組に呼んでいただいたからだ。

 今年は年の初めから、あちらこちら呼んでいただいて、とてもありがたい。

 貴重なチャンスを生かすべく、市内安佐北区の高陽東高に向かう。

 以前から聞いていた強肩・強打の大型捕手。広島の高校生捕手といえば、昨年は広陵高・中村奨成(現・広島)で持ちきりだったが、今年の“奨成”はどんな捕手なのか。路線バス30分の道のりが待ち遠しい。

 着いた停留所のまん前が学校でグラウンド。

 眺めると、紅白戦が今まさに始まったばかり。一目でそれとわかる重量感あふれる捕手の“爆声”が、レフトの向こうまで轟きわたる。

 捕手の第一条件、OK!

 それだけで、来てよかった……グラウンドに向かう足どりにも力がこもる。

捕手歴2年で、この間合い。

 高陽東高・捕手・黒川直哉(3年・183cm88kg・右投右打)。

 誰がどう見たって捕手。捕手にしか見えない。 レガース、プロテクターがぴったり似合う屈強そうな分厚い体躯。もう限界ぎりぎりかと思うほどの下半身の質量。打席の後ろに立つたたずまいがいい。

 中学(軟式)までは、ほぼ三塁手だったという。本気で捕手という仕事に取り組んだのは高陽東高に進んでから、というわりには、ショートバウンドを止めたボールの汚れをちゃんと気にして、ゆっくり拭いて、ゆっくりと返す。

 この何秒かの“間合い”で投手はひと息つけて、文字通り、息を吐き出してリラックスの方向に向かえるというものだ。

 わかってそうしているのかはわからないが、そういう“テンポ”を持っていることが、捕手として貴い。

 先を急ぎすぎる捕手は、守りのリズムをガチャガチャにしてしまうことがある。

【次ページ】 「器用じゃないけど、覚えたことは忘れない」

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