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同性愛を公表し、副大統領を挑発。
アメリカ選手が政治発言をする理由。
posted2018/02/25 09:00
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph by
Tsutomu Kishimoto/JMPA
平昌五輪では連日熱い戦いが繰り広げられていますが、競技だけではなく自身の信念やプライド、そして仲間のために戦っているアメリカ選手もいます。
アメリカは共和党のドナルド・トランプ氏が大統領選で勝利を収めた後、移民やマイノリティに対しての差別的な行為が多発しています。またトランプ氏は、大統領選の最中に同性婚は違憲だ、と発言して支持者獲得をした一方で、選挙に勝利した後は「最高裁で決まったことだから異論はない」とするなど、対立が続いています。
そんな中、五輪という絶好の舞台を利用して、政治家相手にも歯に衣着せぬ発言をしているのが、フィギュアスケートのアダム・リッポン。彼は2015年に同性愛者であることを公表し、今大会で冬季五輪に出場するアメリカ人選手では、初めて正式に同性愛をカミングアウトした選手になりました。そして五輪前からアメリカ副大統領と激しい舌戦を繰り広げ、注目を集めました。
現役の副大統領をSNSで挑発。
今大会の開会式にも参加したマイク・ペンス副大統領は、同性愛嫌悪(ホモフォビア)と噂され、過去には同性愛者を“矯正治療”する団体に出資したと言われており、LGBTコミュニティからは非難の対象になっています。
ちなみにペンス副大統領は、大会前にアメリカチームの激励に訪れることになっていましたが、リッポンはアメリカの新聞USA Today紙に対して「僕たちを病気とみなして『矯正』させようとする奴なんかに会いたくない。試合後なら考えてもいいけど」と面会拒否のコメント。それを聞きつけたペンス副大統領は、開会式直前に再度面会を申し出ましたが、リッポンの答えは「ノー」。
さらにリッポンは開会式で同じく同性愛を公表しているスキー選手のガス・ケンワーシーと写真を撮り、SNSで「ペンス、悔しいだろう」という挑発的なコメントを掲載。
これに対しファンたちは、リッポンの勇気ある行動に大喝采でしたが、ホモフォビアの人々やトランプ政権の支持者たちは、リッポンのSNSに誹謗中傷コメントを送りつけました。
しかしリッポンは「自分の事を嫌いな人からのネガティブなコメントも力になる。それがなかったら今の自分はない」と批判もどこ吹く風の様子で、開幕直後に行われたフィギュアスケート団体戦では銅メダル、個人戦でもすばらしい演技で10位に入っています。
ほかにもリッポンは自身が摂食障害であったことを告白し、同じような苦しみを抱える人に寄り添う努力をしています。