オリンピックへの道BACK NUMBER
銀の平野歩夢と、金のホワイト。
2人だけが知るハーフパイプ新次元。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2018/02/14 17:40
選手生命の危機とも言える大怪我を乗り越えての平野の銀メダル。前回の銀メダルより、ずっと価値ある大会となった。
3本のうち2本めまでトップだった平野。
3本飛んで、最もよかった得点が採用され順位は決定する。
1本目は平野がミスをして35.25、対するホワイトは彼が武器とするダブルマックツイストなどすべてを成功させ94.25、トップに立つ。
2本目が始まる。ここも失敗すれば、3本目は追い込まれることになる。
いや、そう考えるなら……2本目もまたプレッシャーのかかる場面になっていたはずだ。
だが平野は、期待を裏切らなかった。1つ目、空へと高く飛び上がると、大きな歓声があがる。リップからの高さは5mをゆうに超えていただろう。
2つ目、FSダブルコーク1440、そして……キャブダブルコーク1440に成功。決勝のためにあたためていた連続4回転技を、オリンピックでは世界で初めて成功させた瞬間だった。
得点は95.25。トップに立つ。
ホワイトの2本目は、失敗して得点を伸ばせない。
平野と同じ技を決めてみせたホワイト。
平野が1位で迎えた3本目。平野は転倒したものの、他に抜く選手も現れず、ラスト、ホワイトのみを残すばかりとなった。
平野の得点を考えれば、ホワイトにかかる重圧は果てしない。場内からも、この日一番の声援が起こる。
スタート。
そこからが圧巻だった。
1つ目にFSダブルコーク1440、そこからキャブダブルコーク1440に成功。
平野がこの日のために力を尽くしてきたのと同じ技を、オリンピックの最後の最後、強烈なプレッシャーがかかる場面で、自身初めて挑み、決めたのだ。
さらにFS540、ダブルマックツイスト、FSダブルコーク1260と決めたホワイトは、ゴーグルを取り、両腕を高く突き上げた。
97.75。
王者は土壇場で平野を抜き、栄光を取り戻した。