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長友のいないサンシーロは寂しい。
インテリスタが嘆くユートとの別れ。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2018/02/07 11:00
あっという間にチームに溶け込み、キャプテンマークを巻き、長友佑都は走り続けた。インテリスタは彼を決して忘れないだろう。
今も長友の能力は衰えていないが、監督は……。
今季、総額2600万ユーロで獲得された7歳年下のダウベルトと長友は開幕から先発の座を分け合ってきた。ポジション争いにはかつて期待の若手だったサントンも加わった。
三十路になったとはいえ長友の能力は年下の2人に決して劣っていない。しかし、この冬に入るあたりからの起用法からして、中長期的視野でのチーム作りを好む指揮官スパレッティは、クラブが大枚はたいたダウベルトを一人前に鍛え上げるため、今後も彼を辛抱して使い続けようと考えているフシがある。
何度かあった移籍話を断ってきた長友だが、今回ばかりはロシアW杯に向けて継続的にプレーできる環境を望んだ。
「インテルを愛しています」
取材のICレコーダー向けでもSNS上でも、日本人には言いにくい表現を照れなくくり返してきた男だけに、移籍決断は断腸の思いだったろうと思う。
7年間の取材記録に目立つ「日本」の文字。
7年間の取材記録を読み返してみた。
ミックスゾーンでは代表関連の質問が飛ぶことも多いせいもあるだろうが、長友にはやたら「日本」を強調した発言が多いのにあらためて気がついた。
「日本のサッカーを引っ張っていかなきゃならないし、こういう世界一の素晴らしいチームで経験積んで、日本に貢献したいっていう気持ちが強いです」('11年2月4日、入団会見)
「こういう厳しい環境、厳しいリーグでプレーするのは本当に難しいと思うんですよね。(中略)ミラノ・ダービーで日本人が対決できるっていうのは、今までの日本のサッカーの歴史では考えられなかったことだと思う。そういう道を僕たちがどんどん切り開いていきたい」('13年12月15日、本田圭佑のミラン入団報道を受けて)
今でこそフル代表に選ばれる前に欧州挑戦する若手は珍しくなくなり、まず「自分は」と強調する選手が増える中、長友は徹頭徹尾、日本を背負う覚悟を口にしてきた。
ファッションが垢抜け、「アモーレ」が流行語になっても、彼は日本男子としての心意気をもってカルチョの国でのし上がっていったのだと思う。