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1位から70位に落ち……そして優勝!
全豪覇者ウォズニアッキと女傑列伝。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2018/01/31 11:30
全豪オープンで優勝した翌日、メディア向け撮影会でトロフィーと共に取材に応じたウォズニアッキ。
優勝スピーチで語った、夫への愛と信頼。
優勝スピーチで、新チャンピオンは家族席を見つめながら言った。
「あなたの支えがなければ、今朝は神経がまいってしまっていた」
語りかけた相手は、婚約者で元NBAプレーヤーのデビッド・リーだ。
34歳のフィアンセは昨年末にウォズニアッキにプロポーズしたあと、すぐに現役を引退し、今大会はずっとチームの一員、家族の一員として帯同していた。
「あまりにも勝ちたい気持ちが強すぎたんだと思う。そんな私の気持ちをあなたは落ち着かせてくれて、この瞬間を楽しませてくれた。ここにいてくれてありがとう。特別な時間を私とともに過ごしてくれて、ありがとう」
世界中の幸せを独り占めしたような瞬間だったが、2014年のあの不幸な出来事は、テニス関係者の誰もが知っている。
マキロイとの破局で、暗転したウォズニアッキの人生。
ゴルフ界のスーパースター、ローリー・マキロイとの結婚が目前になって破談。
招待状も出したあとのタイミングで、マキロイのほうから電話で一方的に別れを切り出されたということだった。
破局後数日で開幕した全仏オープンでは傷心を引きずるように初戦敗退したが、それから3カ月後の全米オープンで5年ぶりとなるグランドスラムの決勝進出を果たすと、その2カ月後にはニューヨークで人生初のマラソンに挑戦して3時間26分という好タイムを出した。
人生の苦難、女性としての大きな試練を乗り越えたことをアピールしたが、その後もウォズニアッキのテニスには常に無冠の女王というレッテルと、婚約破棄の過去がぼんやりとした影のようにつきまとっていた気がする。
それが、昨年から再び存在感を強める中で、単調でつまらないと言われたテニスにも味わいをもたらすのだから不思議なものだ。