インターコンチネンタル王座の先に2人が見たものは？

　ケガに悩まされることが多くなった最近、棚橋が思い描いた完全復活のプランはその都度、修正を余儀なくされて、近づいては遠のいてきた。

　決まり文句だった「IWGPは遠いぞ」という相手に投げていたフレーズが、今では自分から自分に向けられているような錯覚にとらわれるようになっているはずだ。当然、棚橋としても、ここで後戻りするわけにはいかなかった。

　棚橋も、インターコンチネンタル王座の白いベルトの先にあるものを十分に意識していたはずだ。「エース」の証として、口には出さなくても、欲しいものは欲しい。

　スポットライトを浴びて登場した棚橋は、さっそうと格好良く花道をリングに向かって歩いた。

　だが、数年前に克服したはずの鈴木というレスラーはしぶとかった。

　しぶと過ぎた。

「オマエに奇跡はもう2度と起きない」

「あっちが痛い、こっちが痛い、それでオレに勝てると思うな。この潰れかけた新日本を立て直す奇跡を、オマエが起こしたんだったとしても、オマエに奇跡はもう2度と起きない。

　そう、あるのは力だけだ。

　気にいらないヤツ、片っ端からぶっ飛ばしてやる」

　試合前、Tシャツを着た鈴木みのるは会場入り口の鈴木軍のグッズ売り場でファンにサインをしていた。メインでタイトル戦が、控えていたがそんなことはお構いなしだった。

　鈴木はいつものように自然体で試合に臨んだ。

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