国内で“絶対王者”と呼ばれる江畑秀範との決勝に。

　もう一方のブロックから勝ち上がってきたのは江畑秀範。

　197cmという長身を誇り、国内ではこの階級の絶対王者といわれる選手だ。江畑との闘いを想定して菊野は長身の空手家と練習するなど対策を講じてきたつもりだったが、試合は66－3という大差で江畑が勝利を収めることとなった。

　スコアだけを見れば江畑の完勝だが、菊野はポイントにならない攻撃を積み重ね、それなりのダメージを与えていた。しかし、この戦い方をするならば、相手を倒さなければ勝負にならない。

　ある程度離れて闘ってくると想定していた江畑が、序盤から接近戦を挑んできたことも誤算だった。江畑が覆い被さるように体重を浴びせかけてくると、菊野は相手をちょっと持ち上げるようにして倒す場面もあったが、それは反則と見なされてしまったのだ。

「まだ先の話だけど、階段を一歩ずつ昇ることはできる」

　試合後、菊野は何度も悔しいと呟いた。

「やられました。江畑選手は見事なほどルールを利用した闘いぶりだった。距離を作ってパンチを打たなければならなかったけど、その距離を潰されてしまった。完敗です」

　それでも、オリンピック出場の夢を諦めたわけではない。菊野は今後もテコンドーに挑戦していくことを明言した。

「36歳にしてオリンピックに挑戦するチャンスをもらえたことは幸せなこと。次はもっと上に行けるように頑張ります」

　次戦はアジア選手権の選考会（2月25日・兵庫県）になる予定だが、菊野は海外のオープン選手権出場も視野に入れる。

「オリンピックは（各階級とも）16名しか出られない。ということは、2020年までに世界の16番目くらいまでに入っていないといけない。まだまだ先の話だけど、階段を一歩ずつ昇ることはできる」

　菊野の見果てぬ夢は届くのか。