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箱根駅伝で210人中58人がナイキ。
メーカー契約が勢力図を変える日も?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO
posted2018/01/14 08:00
全員がナイキに身を包んで戦い、箱根駅伝2位に入った東洋大。その足元を巡る戦いも、非常に熱い。
箱根ではウェアと違うメーカーのシューズが目立つ。
おそらく、箱根駅伝もアメリカのカレッジ・スポーツと同じような流れになっていくのではないか。
アメリカのケースから考えるに、箱根駅伝で次に考えられるのは「ウェアとシューズの契約」が切り離せなくなるということだ。
箱根駅伝で興味深いのは、ウェアとは違うメーカーのシューズを履いている選手が目立つことだ。
選手とすれば、シューズは自分の能力を発揮する武器。最終的に自分の好みに合ったメーカーのシューズを選ぶ権利が担保されている。
たとえば、青山学院大とアディダスは強固なパートナーシップを築いてきたが、今回、8区を走った下田裕太は「NBミムラボ」を履いていた。
東洋大のナイキ、山梨学院大のアシックス。
今回の箱根駅伝では、10人の選手全員のウェアとシューズが一致しているのは東洋大のナイキと、山梨学院大のアシックスだけだ。
東洋大は完璧な「ナイキ・スクール」だ。
昨年の10月には、世界陸上で走ったばかりのモハメド・ファラーが東洋大の「TU」のユニフォームを着て選手たちと一緒に練習するなど、関係性を強めている。今回の箱根でも10人中8人がヴェイパーフライ4%を履いており、選手の忠誠心も高い。ただ、面白いのは100mで9秒98をマークした桐生祥秀は東洋大の学生であっても、アシックスのシューズを履いて歴史の扉を開いた。短距離部門はウェアもアシックスであり、ナイキ色は長距離部門ということになる。
しかし、ウェアを提供するメーカーとしては、シューズが違うことは、とにかく避けたい事態だ。
戦略商品の売り出しさえも1月上旬に持ってくるとなると、大学との関係性も重要になる。近い将来、大学側への提供条件が見直され、ウェアとシューズのセット契約が進むことになるのではないか。