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昔はぽっちゃり、今は待望の大砲。
バレー大竹壱青がドイツで開花間近。
posted2017/12/06 10:30
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Noriko Yonemushi
長い間、清水邦広(パナソニック)の後継者がいないと言われ続けてきた全日本のオポジットに、今年、待望の大砲が現れたことは、日本男子バレーにとって明るい材料だった。中央大学4年の大竹壱青である。
今年6月のワールドリーグで全日本デビューすると、2mの長身から、ハンマーを振り下ろすような豪快なスイングで得点を量産した。7月の世界選手権アジア最終予選やアジア選手権では先発を出耒田敬(できた・たかし/堺)に譲ることもあったが、9月のワールドグランドチャンピオンズカップでは大会中に再び先発をつかんだ。
大会後には、ドイツ1部リーグのユナイテッド・バレーズ・ラインマインへの海外派遣が決定。更なる飛躍を遂げるため、10月1日に日本を発った。
大竹は、バルセロナ五輪代表の秀之氏を父に持ち、姉の里歩も全日本選手。そうしたDNAに加え、サレジオ中学、東亜学園高校と名門校で指導を受けた。
しかし大学入学時はまだ体もプレーも、精神的にも甘さがあった。入学時は体重100kgを超えるぽっちゃり体型で、ドスドスと重たそうにコートを走っていた。それでも中央大の菊池加奈子トレーナーの指導などにより、徐々に体つきは変わり、体脂肪率は約10%も落ちた。
「あのぐらいの年代の子は人と違うことをしたがるので、壱青だけ特別、と1種目増やしたりしていましたね」と菊池トレーナーは明かす。
中央大のメンバーはみんな、大竹にちょっと厳しい。
精神面でも、松永理生監督やスタッフ、チームメイトに鍛えられた。中央大のメンバーはみんな、大竹にはちょっと厳しい。サラブレッドでエリートだが、おっとりしていて隙が多いせいか、チームメイトは大竹には言いたいことを言う。
大竹は11月27日開幕の全日本インカレのためにドイツから一時帰国したが、ドイツでもまれて帰ってきた大竹に成長を感じたかと同級生に聞くと、「別に変わらないですよ」と素っ気なかった。
同い年のセッター、山下紘右は「調子に乗って帰ってくるんじゃないかと少し心配していたけど、意外とそれは大丈夫でした」と笑った。
調子に乗りやすいところがあるからと、松永監督も大竹のことは滅多に誉めない。
しかし誰にも「頑張ってきたな」と誉められなくても、大竹は確かに1人、ドイツで奮闘していた。