セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
W杯逃したイタリアの混迷は続く。
経済損失2兆円、権力争いにセクハラ。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2017/12/02 09:00
辞任会見で不満をぶちまけたタヴェッキオ会長。イタリアの悲劇を招いた“戦犯”として、不名誉な形でその名を刻んだ。
アンチェロッティ招聘をちらつかせるも裏切りが。
延命策を練り、再び姿を現したタヴェッキオは大物指導者アンチェロッティの招聘をちらつかせながら、連盟の緊急特別役員会を招集した。その場で信任投票に持ち込み、ポストの再安泰を得るつもりだった。信任に必要な票田は押さえてある。
権力維持の肝は、20しかないセリエAクラブの代表ではない。全国に何千とあるアマクラブを束ねるアマリーグ機構の多数票なのだ。
「アポカリプス」から1週間後にあたる11月20日、開票結果を見たタヴェッキオは顔色を失った。
自らの出身母体であり、子飼いの配下だと疑わなかったアマリーグ機構のシビリア会長が不信任派へ寝返っていた。
CONIのマラゴ会長の差し金か、と地団駄を踏んでも遅かった。何よりかつて会長選で味方だったはずの3部レーガプロ機構のグラヴィーナ会長は、世論の風向きを見て数日前からすでに反対派へ転じていた。
「私を十字架磔の刑にしたのは貴様らだ!」
「私を十字架磔の刑にしたのは貴様らだ!」
辞任会見の場に引きずり出されたタヴェッキオは、大声で怒鳴りちらし、拳を振り上げテーブルを叩いた。要職にある者が備えているべき品位などかなぐり捨てた、自暴自棄そのものの姿を晒した。
「UEFA副会長にFIGC役員のウヴァを送り込めたのは私のおかげだ。私は(予選敗退という)不幸につけ込んで、FIGCの権力を握ろうとする火事場泥棒どもの被害者だ! それほど望むのなら辞めてやる。だが他の役員どもはどうなんだ、え?」
タヴェッキオはグラウンド外での成果を強調した。日本ではあまり関心を持たれないかもしれないが、国際サッカー界で発言力を維持するための継続した働きかけはかなり重要だ。
だが、肝心のW杯に出られるチーム作りへの熱は欠けていなかったか。
FIGC会長という肩書きを失ったタヴェッキオは、いつまでも恨み節を続けていた。
辞任翌日、追い討ちをかけるようにタヴェッキオはセクハラ疑惑で告発された。
彼の居場所はもう故郷の山村にしかないだろう。