沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
全てはクロフネの衝撃から始まった。
チャンピオンズCと交流GIの深い関係。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byGetty Images
posted2017/12/02 08:00
ダートで走ったのは2戦だけだったが、砂の鬼として圧倒的なインパクトを残したクロフネ。現在は種牡馬生活を送る。
ダート路線に変更したクロフネの圧倒的な強さ。
同期に無敗で皐月賞を勝ったアグネスタキオン、ダービー馬ジャングルポケットなどがいて、早くから「最強世代」と呼ばれていた3歳勢の中心的存在だった。NHKマイルカップを勝ち、日本ダービーでは5着。そして秋、天皇賞・秋を目指したが、出走権を獲得できなかったため、ダートに矛先を変えた。
それが大当たりで、ダート初戦の武蔵野ステークスで2着のイーグルカフェを9馬身も突き放してしまった。従来の記録を1秒2も更新する、1分33秒3というレコードのおまけ付きだ。イーグルカフェだって、前年のNHKマイルカップの覇者で、翌年、中山で開催されたジャパンカップダートを勝つ、強い馬だった。
そこから中3週でジャパンカップダートに出てきたクロフネは、単勝1.7倍という圧倒的1番人気の支持を得た。
東京ダート2100mで驚愕の2分5秒9レコード。
ストライドの大きな走りをするので、スタートはいつも速くない。序盤は後方を進み、向正面で徐々にポジションを上げた。3コーナーに入ると、激しく追われる他馬を尻目に楽に加速し、4コーナーを回りながら先頭に立った。
最後の直線。後ろとの差を見る見るうちに広げ、2着に7馬身差をつけてフィニッシュ。流れなどお構いなしに、自分のペースでグルリと回ってきたら、東京ダート2100mで2分5秒9というとてつもないレコードを叩き出していた。呆れるほどの強さだった。
リドパレスは8着だった。騎乗したジェリー・ベイリーは「とにかく勝った馬が強かった。13馬身ほども離されたのだから、何も言い訳にはならないよ」と、お手上げといった表情だった。
ちなみに翌日のジャパンカップではジャングルポケットが勝ち、日本の3歳馬の強さを世界に発信する週末となった。
クロフネはその年の12月に屈腱炎を発症して引退が決まり、翌年のドバイワールドカップ参戦はならなかった。それでも、「今、自分は世界一強い馬を見ている」と確信できる瞬間を、あのジャパンカップダートで与えてくれた。