第94回箱根駅伝(2018)BACK NUMBER
「箱根駅伝総合優勝だけは譲れない――」
古豪・早稲田大学が見せるプライド。
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byAFLO
posted2017/12/01 14:20
今季主将を務める安井(右)は昨年、一昨年と5区山上りで好走。
4年生はわずかに6人、層の薄さを勝機に。
4年生の部員がわずかに6人と、近年にない層の薄さが弱点ではあるが、裏を返せば、そこさえ埋まれば勝機が見えてくるということでもある。
総合3位となった前回の箱根駅伝では、活躍した4年生の陰に隠れて、6区間を下級生が担った。エース区間の2区、そして特殊区間の5区・6区を走った選手がチームに残ったのは大きなアドバンテージと言えるだろう。中でも、相楽駅伝監督が今大会のキーマンに挙げるのが、5区で区間4位と好走した安井雄一主将である。これまでも早大は山上りの5区に人材がいた時、好成績を収めている。
東洋大学との激戦を制し、18年ぶりの総合優勝を飾った87回大会では、猪俣英希のいぶし銀の走りが印象深かった。往路優勝を果たした84回大会では、現コーチの駒野亮太が5人を抜く区間賞の走りでチームを勢いづけた。
安井にも区間賞を取るだけの力は十分あると、相楽駅伝監督は断言する。
「どんな状況でもそこに挑むのが早稲田」
4年生で唯一、1年生の時から箱根駅伝を走ってきた頼れる主将は、今どんな心境でいるのか。練習後に話を訊いた。
――苦しいレースが続いていますが、今の状況をどうとらえてますか。
「夏合宿以降は本当に一人ひとりが率先して練習だったり、チームが良くなることを考えてきたんですけど、なかなか結果に結びつかなくて。僕自身の走りを含めて、あと一歩何かが足りないのかなと感じています」
――成績が振るわず、目標の下方修正の話も出る中、安井主将が箱根駅伝の総合優勝は譲りたくないと主張したと。
「やっぱり、やる以上は1番を目指したいですし、どんな状況でもそこに挑むのが早稲田だと思っているので。ちゃんとみんなが持てる力をしっかり出せれば、必ず戦えると信じています」
信じられるだけの根拠が、過去のデータにある。前々回は区間5位、前回は4位と、勝負の行方を大きく左右する5区を走った安井の安定感は抜群だ。それでも、本人は前回の走りに満足をしていない。むしろ、あれは失敗とさえ話す。
「本来ならあと1、2分は速く走る予定だったので。あの日、すごく気温が高くて、汗をあまりかかずに行こうとウォーミングアップを少なくしたんです。そしたら走り出しがすごく重くて、上手くリズムに乗れなかった。後半は走れていたのでもったいなかったですね」