オリンピックへの道BACK NUMBER
大学でジャンプ転向、小林潤志郎。
平昌五輪候補に急成長できた秘訣。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2017/11/26 11:00
世界の強豪2人を抑えてのW杯初優勝。小林潤志郎にとって大いに自信となるジャンプだった。
ソチ2冠、昨季W杯王者を抑えての優勝が自信に。
サマーシーズンの好成績から、小林はワールドカップ開幕を前に、注目される1人となっていた。夏の結果は勢いだったのか、それとも地力を上げたからなのか、その点にも関心が寄せられていた。
開幕戦のパフォーマンスは、後者であることを示していた。
小林は2本ともに、決して良好とは言えない条件で臨むことになった。2位タイで迎えた2本目も追い風にあたり、不利と言えた。その中で126.5mを飛び、2本そろえることに成功したのである。2位にはソチ五輪2冠のストッフ、3位は昨シーズンのワールドカップ総合優勝を果たし世界選手権2冠のクラフト。強豪選手が失敗なく飛んだ中で、彼らを抑えての優勝であったことも、その価値が分かる。
重心の位置を思い切って変えたのがはまった。
26歳の今、小林が快進撃を見せることができる理由はどこにあるのか。
「アプローチが安定していること」
小林は夏の大会時に語っている。その1つは意識の変化だった。
遠くへ飛ぼうという気持ちが強すぎたのを抑え、しっかり自分の形を組むことに集中するように変えたという。重心を今までよりもさらに高くしたのである。たいていの選手の姿勢を見れば分かるように、重心を低くすればスピードが出る。小林もいかに低い姿勢をとるかを考えてきた。
だが小林は、常識とも捉えてよいところから、発想を転換したのだ。それがはまった。
「前は練習でうまくいかなくても試合ではぎりぎりよいということが多かったですが、今は練習からいいジャンプができているところが違います」
意識を変えたこと、新しい姿勢に取り組んでものにしたことが、今シーズンの結果をもたらしているが、慣れ親しんできた重心の位置を変えるという思い切った策に打って出ることができたのは、昨シーズンの世界選手権で弟のみが代表に選ばれたことが象徴するように、追い込まれた部分もあっただろうし、このまま引き下がれないという思いもあっただろう。
葛西、竹内、伊東の3人に肩を並べられるか。
オリンピックイヤーである今シーズン、ジャンプはソチ五輪団体で銅メダルを獲得したメンバーである葛西紀明、竹内択、伊東大貴の3人が抜け出していて、4人目を他の選手たちで争う構図と考えられてきた。小林は、その4人目へ向けて一歩リードした。いや、小林の今シーズンを見ていると、ただの4人目では終わらなさそうな気配を漂わせる。
冬季シーズンが開幕した今、平昌五輪へ向けて、楽しみな選手が出てきた。小林の夏から冬のパフォーマンスはそう感じさせる。