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今も続くロシアとドーピング問題。
平昌五輪出場への“折衷案”とは。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2017/11/12 08:00
グランプリシリーズで鮮やかな演技を見せるメドベデワ。どういった形で平昌五輪の舞台へ立つことになるだろうか。
女子フィギュアなどは世界的に注目が高い選手が。
ロシア側もしばしば反論してきた。ロシア自身の調査によれば問題はなかったことを発表し、疑惑をかけることには政治的な意図があるなどとして、引かない姿勢をとってきた。
ただ、IOCとしては、ドーピングには厳しく対処する方針を打ち出してきており、WADAや各国の反ドーピング機関の主張はおろそかにはできない。調査委員会を設置したのも、IOCのスタンスあればこそだ。
また、ロシアに限らず、大規模なドーピングが発覚することは珍しいことではない。ロシアへの対応次第では、他の国へのしめしがつかないことから、厳しく向き合うべきだという考えがある。
一方で、容易に処分が下せない要素もある。
国ごと締め出せば、クリーンな選手がいた場合、巻き添えになる。それは問題ではないのか。また、ロシアはソチ五輪で参加国中最多のメダルを獲得したように、冬季競技の大国である。特にフィギュアスケート女子などは、世界的に注目の高い選手がいる。ロシア勢がいなくなった場合の大会への関心、もっと言えば、ビジネス的な側面も無視することはできない。当初、10月には処分を発表するとしていながら延びているのも、容易に結論を下せないからだろう。
国歌演奏を禁止し、開幕式行事を除外する方向。
その中で、11月7日、1つの記事が注目を集めた。NYタイムスによれば、平昌五輪ではロシアの国歌演奏を禁止し、ロシア選手たちを開幕式行事から除外する処分を下す方向で検討されているという。
選手そのものを除外はしない一方で、処分は処分として明確化する。折衷案とも言えるかもしれない。
だが、それに対しロシアオリンピック委員会が反発している。国旗掲揚と国歌演奏などが認められなければ、平昌五輪に参加しないと声明を出しているのだ。ぎりぎりでのせめぎあいとなっている。