サムライブルーの原材料BACK NUMBER
川崎・車屋紳太郎「去年は何かが」
風間仕込みの技術、鬼木仕込みの執念。
posted2017/11/04 07:00
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Kiichi Matsumoto
その左足は、勝負をあきらめない。
豪雨によって水たまりがピッチに点在した10月29日の柏レイソルvs.川崎フロンターレ戦。1-2でアディショナルタイムに突入間近、車屋紳太郎が左サイドからフワリと浮かせたクロスが小林悠の同点弾を呼び込んだ。逆転優勝に向けて勝ち点3だけを求めた試合ではあったものの、あのクロスがチームの望みをつないだ。
25歳、左利きの左サイドバックは冷静だった。グラウンドがぬかるんでない場所から上げることを狙っていた。
「鬼木(達)監督からも試合前、あのエリアをチームとして狙っていこうという話があったので、そこに入っていくことは意識しました」
振り返れば代表デビューとなった10月のハイチ代表戦も、左サイドをえぐってマイナスにクロスを送りこんでいる。後半開始からの出場とはいえ、最後の最後で結果を生み出せる集中と執着が彼にはある。
1年目はほとんどの試合で足がつっていた。
筑波大出身、3年目のシーズン。心身ともに彼は随分とタフになった。リーグ戦はここまで31試合すべてに出場し、出場時間も熊本・大津高、筑波大の先輩でもある谷口彰吾に続いてチーム2番目に長い。
九州男児、肥後もっこす。静かな口調ながら、意志の強さは伝わってくる。
「スタミナはめちゃくちゃあるほうじゃないと思うんです。1年目は、ほとんどの試合で足がつっていました。2年目から慣れてきて、足がつらなくなってきた。日々のトレーニングは全力でやることを心掛けていますし、そのトレーニングや試合を通じて体は強くなってきているのかな、と。
今年、(ACLとの過密日程で)連戦が続いたときはかなりしんどかったです。でも鬼木監督は自分を信用して使い続けてくれた。その期待に応えたい、と。僕とエウシーニョはサイドバックなので誰よりも走らなきゃいけないと思っています。チームにはうまい選手が多い分、そういう(走る)選手が必要だなと思うので」