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川崎・車屋紳太郎「去年は何かが」
風間仕込みの技術、鬼木仕込みの執念。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

PROFILE

photograph byKiichi Matsumoto

posted2017/11/04 07:00

川崎・車屋紳太郎「去年は何かが」風間仕込みの技術、鬼木仕込みの執念。<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

川崎躍進の立役者としても、日本代表にとって懸案だった左SBとしても、車屋紳太郎の存在感は日々増す一方である。

クロスのバリエーションは実に豊富。

 そして迎えた清水戦、車屋は積極的に左サイドを駆け上がり、チーム2点目となる小林のゴールをアシストした。チームは3-0と快勝。この試合で結果を残したことで、「気持ち的にも徐々にいつも通りに戻ることができた」と彼は語った。

 気持ちを切り替えたいと思う試合で、それを可能とする。

 昔から切り替えがうまいほうだったのか、尋ねてみた。すると彼は、首をひねった。

「1年目は調子の波が激しかったんです。でも最近は割り切ってやっています。どんどん試合が来るので、(調子が悪くても)落ち込んでいられないというか。そういう気持ちのところは、去年あたりから強くなってきたのかなとは思います」

 切り替えは、ゲーム中の駆け引きにおいても活きている。

 雨中のレイソル戦、1点目は左サイドに出た家長昭博の折り返しをワンタッチでフワリとGKとDFの間に送り、知念慶のゴールをアシストした。相手のタイミングをずらした技ありのクロスだった。アーリークロスもあれば、左サイドをえぐってからのマイナスに送るクロス、ニアに合わせる速いクロス、置きにいくフワリ系のクロスなどバリエーションが実に豊富だ。相手が前に立っていようが、正確なクロスを送ることができる。

「今年はクロスの練習を結構取りいれてもらっているので、中との意思疎通が図れてきたというのはあると思います。自分の理想としては、使い分けていければ僕が相手だったら嫌だと思うし、そうなったらまたドリブルも活きてくると思うので」

フロンターレにとっての初タイトルを、左足で。

 代表では10月に続き、ブラジル代表、ベルギー代表に挑む欧州遠征のメンバーにも名を連ねた。代表で心掛けるのは「自分を出していくこと」だ。

「前回代表に行って、多少なりとも自分の特徴は分かってもらえたかなと思います。もっともっと話ができたり、時間があれば、自分もチームのことがより分かってくるし、逆に自分の特徴をもっと分かってもらえるはず。代表で活動できる機会を増やしていくためにも、まずはフロンターレで結果を出していかなきゃいけないと思っています」

 リーグ戦は首位鹿島アントラーズを勝ち点4差で追い、最後まであきらめずに優勝を狙っていく。そして11月4日には、YBCルヴァンカップ決勝でセレッソ大阪と対戦する。優勝すればフロンターレにとって悲願の初タイトルになる。

「シーズン通してやってきている闘う部分や勝利に対する執念が(タイトルを獲る)最後のキーになるんじゃないかって思います」

 左足に、執念をこめて――。

 タフに戦い抜き、走り抜いた先に、車屋紳太郎は新たな何かを手に入れるはずである。

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