卓球PRESSBACK NUMBER
平野美宇のチキータが読まれた!
卓球W杯、徹底マークに見えた課題。
text by
高樹ミナMina Takagi
photograph byAFLO
posted2017/11/05 09:00
各国から厳しいマークを受けることになった平野。それはトップクラスの選手であると認められた証拠でもある。
自分の戦術パターンを自ら突破することが必要。
試合の中で戦術を判断するのは結局、選手本人だとも中澤コーチは言う。
「判断力を含め、総合的な能力が高くなければ、中国選手との勝負には勝てません。ところが選手というのはどうしても、試合になると熱くなって、正しい判断ができなくなるもの。すると自分の得意なこと、やりたいことに走ってしまい、相手に対応することよりも自分を優先しがちです。もちろん自分の特長を生かすことは大事ですが、それはケース・バイ・ケースで、今は相手に待たれていると察したら戦術を変えなくてはなりません」
確かに平野とリュウ・シウェンの試合では、大事な場面で平野が得意なボールを打っても、それをリュウ・シウェンに倍返しで強打されるポイントがいくつもあった。中澤コーチは、「得意なボールを打てば安心だけど、狙われて相手のチャンスボールになってしまうことがある。だから自分の戦術パターンを自ら突破することが必要なのです」と話す。
約1カ月で強気を取り戻したところに頼もしさが。
戦術の話とは別に、1つ気になることがあった。約1カ月前、ワールドカップの大陸予選にあたるアジアカップで、「自信がない」と不安を口にして泣いていた平野は今、どんな精神状態にあるのか。本人はこう話す。
「アジアカップの時は自分の今までの成績に勝手にプレッシャーを感じて守りに入ってしまった。この1年すごく順調に来て、アジアカップの時みたいに負けが多い試合があまりなく、すごく戸惑った。でもワールドカップでは強い選手がいっぱいいて、自分は向かっていく気持ちで試合に臨んでいる。実際、1回戦、準々決勝と試合をする中で徐々にいい気持ちになり、思い切ってプレーできるようになっていった」
さらに大会初戦の前日には「去年を超えるには連覇しかない。連覇して伝説になりたい」と語り、準々決勝後には、足の痛みを訴えた香港の選手に対し、「動揺して精神的に崩れたら終わり。潰すくらいのつもりで戦った」といった強気な発言も久々に飛び出した。わずか1カ月程度で気持ちを立て直してきた平野に頼もしさと成長を感じた。