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Wシリーズを襲ったグリエル問題。
ダルビッシュの“まとめ方”が凄い。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2017/10/31 11:30
グリエルは強力アストロズ打線においても今季、打率.299、18本塁打、75打点と存在感を発揮している。
普段のグリエルは「無邪気」そのもの。
アジア人を誰でも「Chino」と呼んでいることを明らかにしたのは少し間違っているような気もするのだが、グリエルにはそれがアジア人蔑視である意識はない様子だった。
それが問題の核心かも知れない。ツイッターでは、ある人がこう呟いている。
「(テレビではグリエルが)スペイン語の『Chinito』って言ってるように見えたが、それは『Little Chinese』って意味だ。アジア系の人々を馬鹿にしている」
コミッショナー裁定で来季開幕から5試合の出場停止処分を受けたわけだから、グリエルの真意が何であれ似たようなことを言ったのは間違いないだろう。問題は試合後のインタビューでそういう風に話してしまうところが無警戒すぎる、ということ。
実はメジャーリーグの舞台裏ではそういった言葉も頻繁に使われており、たとえば仲間内でお互いの身体的な特徴を言い合うことが、その関係の親密さを裏付けていたりもする。
そして普段のグリエルは「無邪気な人」という形容がピッタリくる人。子供のように喜怒哀楽を表わすし、気さくに何でも話してしまう。それが今回は完全に裏目に出たようだ。
ダルビッシュ「世界の人がまたひとつ習って」
ともあれ、起きてしまったことは仕方ない。見事だったのはダルビッシュの試合後の囲みでの“まとめ”方だった。
あなたは怒っているのか? と尋ねた記者に対し、ダルビッシュは「もうムチャクチャ怒ってます」と言った後で「No,No,No」と笑いながら否定し、こう続けた。
「やっぱり、ここにいる人たちもそうなんですけど、この世界で生まれた人、誰もパーフェクトな人はいません。彼もそうですし、僕もそうですし、今(質問を)聞いているあなたもそうでしょうし。これによって世界の人がまたひとつ習って、また全世界の人間として、また一歩前に進めたら、結果的にはいいことになるんじゃないかなと思います」
どう考えてもネガティブなことを、そのままネガティブに捉えるだけじゃ、未来は良くならない――。
今回の“ジェスチャー事件”の対応に、今の彼の生き方が反映されているような気がする。