マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ドラフト当落選上の野球巧者たち。
亜細亜大と九共大のじれったい2人。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byTakashi Hamanaka
posted2017/10/23 08:00
甲子園にも1度出場し、大学では1年からレギュラーに定着した九州共立大の望月涼太。プロ入りなるか。
プロに進んで体躯がもうひと絞りされたら……。
亜細亜大・北村拓己内野手(181cm87kg・右投右打・星稜高)のことだ。
年々、ユニフォームがきつそうな全身の充実を見せながら、4年間で見事に隆々とした体躯を作り上げてきた。
しかし反面、年々動きにくそうな、回転しにくそうな印象になって、スイングやベースランニングのスピード感が、ちょっと……大学生なら、もうちょっと若々しく見えるといいなぁと思わせて、首をひねっている目の前で9回に決勝タイムリーを放ってみせたりするから、またわからなくなる。
言える事は、野球の上手さと感性の鋭さ。
こういう選手がチームに何人もいてくれたらと願っても、それは無理だから、せめて1人いてくれたら、チームの“空気”を変えてくれるのでは。
誰もがそう考えるのではないか。
へんな言い方だが、私は亜細亜大・北村拓己にある“伸びしろ”を感じている。
それは、プロに進んで亜細亜大以上のきびしい練習や気苦労、気疲れ、いろんな理由で彼のその立派な体躯がひと絞りされた時、北村拓己という達者な「野球職人」がどのような仕事を見せてくれるのか。
もしかしたら今は想像できないような、キビキビとしてメリハリの効いた敏捷な走攻守を見せてくれるのではないか。遊撃、三塁に二塁もこなせて、今はあまり表に出してはいないが、実はかなりの長距離砲の資質も兼備したハイレベルなユーティリティプレーヤーになれるのではないか。そこのところである。
九州にも、じれったい内野手が1人いる。
そして、もう1人、「こんなもんじゃないだろう!」と肩のひとつも叩いてあげたくなるような内野手が九州にいる。
九州共立大・望月涼太遊撃手(175cm76kg・右投左打・東大阪大柏原高)だ。
もっと動けるだろう! もっと振れるだろう!
見るたびに、そんなじれったさが残る。
野球の上手い選手なのは間違いない。打球の強弱、伸びる、沈むに対して、実に正確に反応できる。動きに人工的な匂いがなく、ボールに対して自由になれて、捕球→送球の流動性、長いスナップスローの精度も高いショートだ。
だけど、もっと動けるだろう、もっと勝負を懸けられるだろう、スピードだってもっと隠し持っているだろう……そんな欲求不満が後に残る。