“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
浦和→代表→海外のはずが……。
19歳伊藤涼太郎、J2水戸で再出発。
posted2017/10/20 10:30
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
「開幕ベンチもJデビューも思い通りと言うか、想定していたサッカー人生だった。……でも、そこからの期間は本当に苦しかったし、『何でやろ』と思った日々もあった」
浦和レッズにとって5年ぶりの内部昇格以外の高卒新人となった、伊藤涼太郎という選手がいる。
昨シーズン作陽高校から浦和に加入した彼は大きな期待を背負っていた。ルーキーイヤーにいきなり開幕戦でベンチ入りを果たすと、4月29日のJ1第9節の名古屋戦で途中出場し、早くもトップデビューを果たした。
「僕の目標はあくまでA代表に入ることと、世界に出てプレーすること。レッズでレギュラーを掴むことが出来れば、そのままA代表という道が見えてくると思っている」
入団前から思っていることをはっきりと口にする強気の性格で“ビッグマウス”とも表現されたルーキーは、華々しいスタートを切ったかに見えたが、すぐに浦和での厳しい生存競争の中に飲み込まれた。
出番から遠ざかって「色んな歯車が狂った」。
ベンチ入りメンバーから外れ、公式戦の日は大原グラウンドで汗を流す日々。ルーキーとしては当たり前のこだが、派手な船出を飾った彼にとっては、落差の大きい状況だった。
「どんどん(出番から)遠ざかっているのが分かったし、U-19日本代表も(2016年)5月の韓国遠征に呼ばれたきり、一切呼ばれなくなってしまった。この辺りから自分自身もちょっとおかしいと言うか、いろんな歯車が狂ってしまった」
浦和で起用が想定されたポジションはボランチ。そこには阿部勇樹、柏木陽介、青木拓矢、遠藤航ら百戦錬磨の選手がひしめく超激戦区のポジションである。そこに高卒ルーキーが簡単に割って入れるような状況ではなく、周りから見てもしばらくは我慢が必要なのは明らかだった。
当然、彼自身もこのような状況は覚悟の上の浦和入りだった。だが現実に直面すると、狼狽してしまう自分がいた。毎日のように悔しさを味わいながらも、必死で打開策を見つけようとした。